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理研CDBの騒動について

もうひとつだけ書きます。たぶん、もう書きません。

Natureに出た2本の論文のうち、STAPの存在を主張したほう(corresponding authorがObokata and Vacantiのほう)についてですが、Natureの論文は各著者の役割分担を書くことになっていて、それによれば、論文執筆はObokata and Sasaiです。論文執筆の責任は笹井さんにもあるわけで、その責任はきちんと明らかにされるべきと思う。それから、丹羽さんはdesigned the projectのひとりになっているのに、先日の「検証実験をします会見」ではどう考えてもプロジェクトの計画に携わらなかったかのように言っているので、これは論文の記述と齟齬があるから、説明しないといけないと思う。この部分も論文訂正が必要なのではないか。というか、丹羽さんは執筆者を降りても問題ないはず。

理研は論文の撤回を勧めているそうだけど、corresponding authorのふたりが撤回に同意していないから、これは撤回されない。ただし、他の共著者は「著者を降りたい」という意思表示ができるはずで、それをしているのかどうか。みんな降りちゃうと実験の一部が誰の責任かわからなくなってしまうけれども、原理的にはできるのではないかと思う。

で、理研側はおぼかたさんは「未熟だった」で済まそうとしているみたいなのだけど、そういう人をユニット・リーダーに抜擢した任命責任が明らかにされていないように思う。彼女の採用・抜擢の経緯を明らかにするのは、世の中にたくさんいるポスドクやポスドクに採用されていない研究者に対する責任じゃないかな。たいした経験や業績があるわけではない人がどうして理研のユニット・リーダーに抜擢されたかは、この問題の重要なポイントなので、ここの説明は絶対に必要なはず。

「業績はないが優秀な若手を抜擢する」って、お題目として唱えるのは簡単だけど、実行はとても難しいよね。業績を知らないとすると、もうコネくらいでしか「優秀さ」を知る方法はないわけで、オープンな公募で実現するのは無理じゃないかな。もちろん、公募しないという手はあるけどね。もし公募しちゃったら、業績で判断する以外の道はなくなると思う。採用理由を対外的に説明できないでしょう。もちろん、業績だけで選ぶ必要はないのだけど、説明はできなくてはならない。

あ、当然ながら、泳動写真に手を加えたおぼかたさんのやりかたが改竄・捏造と言われるのはしかたない話で、これについては特に申し開きのしようはない。

最後に、この問題がここまで世間で大きく取り上げられることになってしまったのは、最初におぼかたさんを「割烹着のリケジョ・アイドル」として売ろうとしたからですよ。それを仕掛けた人たちの責任はあるよ。これは何度でも言っておきたい

[追記] 忘れてましたが、Materials and Methodsにコピペがあるという話。若山さんのやった実験なので、著者は詳細わかんないからコピペしたちゅうのは本当かな。そこは実験担当者が書くか、少なくとも目を通すべきところで、この部分での責任の分担がどうなってるのかは、きちんとしなくては

あと、ベル研でのシェーンの捏造事件と似てるのかというと、実は全然似てないのではないかという感想は持っている。それから、理研の対応を見てると丹羽さんや笹井さんはSTAPが実在する方に相当賭けてる印象ですけどどうでしょね

— posted by きくち at 05:57 pm   commentComment [25] 

博士論文中での剽窃について

STAP細胞の問題から飛び火して、早稲田の先進理工学研究科に提出された小保方さんの博士論文に剽窃があるという問題が持ち上がった。と思ったら、どうやら小保方さんだけではなく複数の博士論文に剽窃が、それもものによってはかなり大規模な剽窃があるということがわかって、早稲田の先進理工学研究科は過去の博士論文280編の全調査を始めるのだそうだ。これは大変な話。

剽窃といっても、誰かの研究を盗んだという話ではなくて、論文のイントロ部分。研究論文を書いたことがないかたには、もしかするとその重要性が伝わらず、なあんだと思われるかもしれない。だけど、イントロというのはとてもだいじなところで、そこで自分の研究の歴史的位置づけや価値を主張するのだから、きちんと書かなくてはならない。博士論文の審査でも、研究の背景をきちんと理解しているかとか、自分の研究をきちんと位置づけられているかは問われる。だって、「その研究のどこが新しいの?」っていう質問にきちんと答えられないと困るでしょう? 指導教員に言われた通りに研究するだけなら、誰にでもできるわけで、博士号を貰うからには「言われた通りにやりました」では済まない。だから、背景を自分の言葉で書けるのがとてもだいじなのだ。僕らも普段から「自分が実際に研究した内容を書くのは誰にでも簡単にできる。大変なのはイントロだ」と指導している。実際に書いてみないと、その大変さは実感できないけどね。

そういうだいじな部分のはずなのだけど、今回、早稲田の先進理工学研究科(の一部)で、剽窃が横行していたらしいというニュースを見ると、どうもイントロを「だいじ」と考えない文化を持つ学問分野があるのではないかと思えてくる。大規模な剽窃をしたのがひとりふたりではなかったのだとしたら(ネットで見る限り、ひとりふたりではなさそうだ)、実は「イントロなんか剽窃で構わない」という文化がそこにあったのではないだろうか。僕はもう一歩踏み込んで、そういう指導をする教員が(おそらく複数)いたのではないかという疑念を持っているのだけど、それは今後明らかにされるだろう(万が一にも、先進理工学研究科の調査が単に剽窃の有無の確認だけに終わって、教員の指導体制にまで踏み込まないなんてことにならないように望む)

いずれかの学問分野に「博士論文は自分が研究したことを書きさえすればよくて、背景や位置づけなんかは剽窃で構わない」という文化があるとしたら、それは学問としてとてもまずい。これは先進理工学研究科だけの問題ではないかもしれない。調査がどういう結果になるか、注目している

— posted by きくち at 07:52 pm   commentComment [6] 

「いちから聞きたい・・」のあとがき

「いちから聞きたい放射線のほんとう」が店頭に並びました。内容は柔らかいんだけど、テーマがテーマなので、どうしても科学書の「原発」とか「放射線物理」とかの棚に置かれてしまい、なかなか目にとまりづらいかもしれませんが、ぜひ手に取ってみてください。おかざき真里さんのイラストがすばらしいです。

宣伝も兼ねて、僕の「あとがき」を引用しておきます。本文は小峰さんの文章で終わりで、そのあとにつけてあるこのあとがきはまあおまけのような事務連絡のような、そんなものです


あとがき

 東日本大震災は東北地方に地震と津波による大きな被害をもたらしました。それから、東京電力福島第一原子力発電所の事故が起こりました。津波で失われてしまった町が放射性物質による汚染のために復興にとりかかれない、そんな光景も後に僕たちは目にしています。

 原発事故のあと、放射線について友人に聞かれる機会が増えました。小峰公子さんもそうした友人のひとりです。吉良知彦さんと小峰さんのZABADAKは、一聴して彼らのものとわかるユニークな音楽を四半世紀も続けてきた稀有なバンドです。その小峰さんの実家が郡山市にあるというので、いろいろな話をしました。物理を教えているとはいえ、放射線とはずっとごぶさただった僕は、あわてて教科書やICRP勧告などを買ってきたのでした。

 震災から3ヶ月後、いろんな人たちとガイガーカウンターミーティング(GCM)というイベントを開きました。その頃、たくさんの人がガイガーカウンターを手に入れて放射線を測っていましたが、ひどくおかしな測定値もあって混乱していたのです。「放射線をなるべく正しく測ろう」という趣旨で開いたのがGCMでした。おかざき真里さんとは、そのGCMで知り合いました。女性の揺れ動く恋愛感情を描くおかざきさんのマンガは繊細で美しく、そしてエロティックです。

 いま、放射線の本はたくさん出版されています。でも、書店に行くと、内容の怪しそうなものもずいぶん目に止まります。一般向けにやさしく書かれた本で信頼できるものは少数派のようです。これは困るね、基礎知識をわかりやすく書いたものがもっと欲しいね、ないなら作ってしまおうと小峰さんと話してできたのがこの本です。本文は小峰さんとインターネットを通じて交わしたチャットがもとになっています。おかざきさんに絵を描いていただいて、ちょっと他にはない本になりました。

 この本では、今知っておきたい知識に話を限りました。だから、普通の放射線の本なら必ず書いてあるはずの核分裂(原子力発電の原理ですね)やそのときに出る中性子線には触れていませんし、放射線という言葉もα線・β線・γ線のみっつに限って使いました。このみっつと中性子線は正しく言うなら放射線の中でも電離放射線と呼ばれるものです。ほかにも、話を簡単にしたところがたくさんあります。そのかわり、普通の本には出ていないような素朴な疑問にも答えたつもりです。  

 これを読んで、放射線についてもう少し知りたくなったかたには、次の二冊をお薦めします。

「増補改訂版 家族で語る食卓の放射能汚染」(安斎育郎著、同時代社)
「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」(田崎晴明、朝日出版社)
どちらも一般向けにわかりやすく(もちろん、この本よりは難しいけど)書かれたものです。

 この本が、これからの暮らしを考えるきっかけになればいいなと思います。

— posted by きくち at 04:56 pm   commentComment [2] 

論文: Structural flexibility of intrinsically disordered proteins induces stepwise target recognition

ブログのバージョンアップやらなんやらで、書きそびれていたものです。博士課程学生の白井君の研究で、「天然変性タンパク質」についての計算機シミュレーションです。タンパク質は、生理条件下で特定の形(立体構造)を取って機能すると考えられてきましたが、近年、生理条件下でも特定の立体構造を取らないタンパク質が大量に発見されています。それらをまとめて「天然変性タンパク質」と呼びます。特に細胞の核内に多く、シグナル伝達などに使われています。以前の松下君の論文は「天然変性」が構造フラストレーションによって作られるという仮説を提示したものでした。この論文では、簡単な格子モデルを使って、天然変性タンパク質とターゲットとなるタンパク質との結合のシミュレーションを行い、天然変性であることがターゲット分子の認識に有効に働くことを示しました。興味のあるかたは、ぜひ白井君をセミナーに呼んでください

Structural flexibility of intrinsically disordered proteins induces stepwise target recognition

Nobu C. Shirai and Macoto Kikuchi

Citation: The Journal of Chemical Physics 139, 225103 (2013);

doi: 10.1063/1.4838476 http://dx.doi.org/10.1063/1.4838476Link

abstract:

An intrinsically disordered protein (IDP) lacks a stable three-dimensional structure, while it folds into a specific structure when it binds to a target molecule. In some IDP-target complexes, not all target binding surfaces are exposed on the outside, and intermediate states are observed in their bind- ing processes. We consider that stepwise target recognition via intermediate states is a characteristic of IDP binding to targets with “hidden” binding sites. To investigate IDP binding to hidden target binding sites, we constructed an IDP lattice model based on the HP model. In our model, the IDP is modeled as a chain and the target is modeled as a highly coarse-grained object. We introduced motion and internal interactions to the target to hide its binding sites. In the case of unhidden binding sites, a two-state transition between the free states and a bound state is observed, and we consider that this represents coupled folding and binding. Introducing hidden binding sites, we found an inter- mediate bound state in which the IDP forms various structures to temporarily stabilize the complex. The intermediate state provides a scaffold for the IDP to access the hidden binding site. We call this process multiform binding. We conclude that structural flexibility of IDPs enables them to ac- cess hidden binding sites and this is a functional advantage of IDPs.

— posted by きくち at 07:30 pm   commentComment [0] 

「いちから聞きたい・・・」の目次とカバー [kikulog 642]

「いちから聞きたい放射線のほんとう - いま知っておきたい22の話」の目次です。こんな話を書きました。 第一部の前の「自然と科学とわたしたち」から第二部の10までが対話になっています。 おかざきさんの絵は随所に

............

プロローグ おかざき真里
この本を手にとってくれたかたへ 小峰公子

自然と科学とわたしたち

第一部 放射線ってなんだろう
1 みんなつぶつぶでできている - 原子と原子核のこと
2 放射線はやるせなさエネルギー - α線のこと
3 電子ビューン - β線のこと
4 光って、つぶつぶ - γ線のこと
5 ダイスをころがせ - 半減期のこと
6 からだのなかの放射性物質 - 生物学的半減期のこと
7 単位と大きさのこと
8 ベクレルってなに?
9 ふたつのシーベルト - 等価線量と実効線量
10 何を測ってるの? - 空間線量率
11 食べたらどれくらい内部被ばくする? - 預託実効線量
12 ここまでのまとめ

第二部 放射線とわたしたち
1 気になっていたことをこの際、聞いてしまおう
2 放射線ってどういう影響があるの
3 遺伝子と放射線のこと
4 放射線とがんのこと
5 母親も、将来母親になるひとも
6 子どもの甲状腺がんのこと
7 核実験の時代 - むかし降った放射性物質のこと
8 まわりにある放射線 - 自然放射線のこと
9 除染してわかったこと
10 放射線とわたしたち

私が考えるリスク 小峰公子
あとがき 菊池誠

表紙の画像も貼っておきますね。おかざきさんの絵が希望を感じさせて、すてきだと思います。

cover

— posted by きくち at 02:35 pm   commentComment [4] 

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