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2013/04/22 『物語数学史』(ちくま学芸文庫)と雑誌『星雲』のこと [kikulog 633]
2013/04/08 だってホーガンだもの [kikulog 632]
2013/04/04 論文: Frustration-induced protein intrinsic disorder

2013/04/22 『物語数学史』(ちくま学芸文庫)と雑誌『星雲』のこと [kikulog 633]

カテゴリー: 日 記

ちくま学芸文庫から『物語数学史』(小堀憲)という一般向けの数学の通史が出ています。2月頭に出た本なのですが、ばたばたしていて告知していませんでした。

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480095107/

僕が解説を書いています。

この本、もともとはだいぶ以前に新潮選書から出たものです。そのため、古いところもあると思いますが、一般向けの通史は意外に少ないと思うので、よろしければ手に取ってみてください(解説は印税ではないので、売れても僕が儲かるわけではありません)

実は、この文庫化は僕が企画を提案しました。その際、新潮選書版にはない付録として、小文『エヴァリスト・ガロア』を収録してもらいました。この小文は日本初のSF雑誌と言われる(だけど、一号しか出なかった)雑誌『星雲』に掲載されたものです。『星雲』の文章がそのままどこかに再録されるのは珍しいのではないかと思います。内容はガロアの伝記ですから、SFでもなんでもないんですが、『星雲』を見たことがないかたも多いでしょうし、その意味でも面白いのではないかなあ(という狙いで付録にしました)

おなじくちくま学芸文庫から出た同著者の『大数学者』と合わせてお読みいただければ

なお、著者との関係や『星雲』のことは『大数学者』についてブログ記事を書いたときに触れました。今回の解説にはこの文章も使っています

http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1270200239


2013/04/08 だってホーガンだもの [kikulog 632]

カテゴリー: 日 記

Dropboxを眺めてたら「ほーがん.txt」という2010/10/4付けのファイルがあった。

あんまり覚えがなかったんだけど、SFマガジンのホーガン追悼特集のために書いたのではないかと思う。まったく褒めてないのもどうかと思うものの、面白いので公開します。「星を継ぐもの」に驚き呆れたことを懐かしく思い出しました

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だってホーガンだもの

 実は、特に理由もなく『揺籃の星』をしばらく読みそびれていて、読んだのはそろそろ続編の翻訳も出ようかという頃で、しかも必要に迫られて読んだのだった。今どきヴェリコフスキー・ネタでSFを書くなんて、よほど勇気がなきゃできない話だから、それはすごいと飛びついて読んでいてもよかったはずなんだけど、今さらホーガンかという気分が先に立ったのかもしれない。ごめんなさい。

 で、読んでやっぱりびっくりした。ヴェリコフスキー説がどう扱われているのかと思ったら、そのまんま話のど真ん中に据えられているのだもの。しかも、巻末解説では金子隆一さんがそのトンデモ具合を貶していたから、これまたびっくり。でも、物語としては充分に面白いんだから、そうけちょんけちょんに言わなくてもいいと思う。この作品、確かにトンデモかもしれないけど、ある意味とてもホーガンらしい。

 創元から『星を継ぐもの』の日本語訳が出たとき、僕はまだ大学生だった。とにかく翻訳前から「すごい」という評判があって、待ち兼ねて読んだ記憶がある。いや、もしかするとそういう順序じゃなかったかもしれない。なにしろ30年も前だ。

『星を継ぐもの』は本当に「大技一本でほかには何もありません」みたいな作品だった。絶対にSFでしか書けない壮大な謎と後先考えない思い切りのいい謎解きに、僕たちはまず唖然とさせられて、それから喝采を贈った。正直、かなり無茶な設定なんだけど、SFとミステリーを融合するならこれくらいのことはしてくれなくちゃ、これならうるさいことは言わずに許しちゃおう、と思わせられるそんな迫力があった。恐いもの知らずというか蛮勇というか、それがこの作品の魅力だ。ホーガンの作品からどれか一作選べと言われたら、今でもこれを選ぶ。たぶん僕以外にもそういう人は多いに違いない。作家としては、そういう評価はあまりうれしくないかもしれないけど。

 次に出た『創世記機械』がばりばりのハードSFだったので、ホーガンはハードSF作家扱いになった。こちらも大技一本で通した蛮勇の作品だけど、僕はあまり感心しなかった。たぶん、物語の風呂敷をあまりにも広げてしまって、なんでもありになり過ぎていたんだと思う。ありていに言えば、ハードSF作家としては筋が悪いし、科学の素養もかなり怪しい。でも、このなんでもありってところに惹かれたファンも多かったはずだ。

 もちろん、ホーガンはちゃんとした傑作SFだっていくつも書いている。でも、将来僕たちがホーガンと聞いて思い出すのは、たぶん『星を継ぐもの』に代表される、後先考えない蛮勇の作品群に違いない。なぜなら、僕たちSFファンはそういう怖いもの知らずの思い切りのよさが大好きだからだ。それでいいのだ。R.I.P.


2013/04/04 論文: Frustration-induced protein intrinsic disorder

カテゴリー: 日 記

PDの松下君がやった研究の論文が出ました

科研費の「天然変性タンパク質の分子認識機構と機能発現」

http://www.tsurumi.yokohama-cu.ac.jp/IDP/

での研究です

興味があれば、松下君をセミナーなどに呼んでください

Frustration-induced protein intrinsic disorder

Katsuyoshi Matsushita and Macoto Kikuchi

J. Chem. Phys. 138, 105101 (2013)

http://dx.doi.org/10.1063/1.4794781

abstract:

Spontaneous folding into a specific native structure is the most important property of protein to perform their biological functions within organisms. Spontaneous folding is understood on the basis of an energy landscape picture based on the minimum frustration principle. Therefore, frustration seemingly only leads to protein functional disorder. However, frustration has recently been suggested to have a function in allosteric regulation. Functional frustration has the possibility to be a key to our deeper understanding of protein function. To explore another functional frustration, we theoretically examined structural frustration, which is designed to induce intrinsic disorder of a protein and its function through the coupled folding and binding. We extended the Wako-Saitô-Muñoz-Eaton model to take into account a frustration effect. With the model, we analyzed the binding part of neuron-restrictive silencer factor and showed that designed structural frustration in it induces intrinsic disorder. Furthermore, we showed that the folding and the binding are cooperative in interacting with a target protein. The cooperativity enables an intrinsically disordered protein to exhibit a sharp switch-like folding response to binding chemical potential change. Through this switch-like response, the structural frustration may contribute to the regulation function of interprotein interaction of the intrinsically disordered protein.