200509のブログ

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2005/09/28 インテリジェント・デザイン
2005/09/27 電子レンジの周波数
2005/09/22 入試問題とかテレビ局とか
2005/09/14 英語は難しくてわかりません
2005/09/11 惑わされないための練習問題
2005/09/07 百匹目の猿と戯れる
2005/09/05 ケンイチ君と科学

2005/09/28 インテリジェント・デザイン

カテゴリー: ニセ科学

産経webの「教育を考える」がインテリジェント・デザイン派の渡辺久義京大名誉教授にインタビューしています

http://www.sankei.co.jp/databox/kyoiku/etc/050926etc.html

渡辺氏は科学の専門家ではないし、本文を読んでみても科学の意味を理解していないと思われますが、そういう人が「IDは科学だ」と主張するインタビューです。こんなのを掲載するのは狂気の沙汰と思いますが。京大名誉教授という肩書きなら、全然だめな主張でも受け入れてもらえると考えたのでしょうか。

最後の節はインタビューではなく、編集部の記事と考えられますが、「進化論偏向は道徳教育にマイナス 日本の識者も主張」という見出し。"日本の識者も主張"と、あたかも編集部の主張ではないかのように見せているところが姑息ですね。進化論派の主張はまったく掲載されていません。

要するに「進化論偏向は道徳教育にマイナス」というのが編集部の主張です。ここでもまた問題は「科学」と「道徳」の関係になっています。科学的事実によって覆される程度の道徳なら、初めから無意味なのではないかなあ。こういう主張をする人たちはそもそも自分の道徳観自体に自信がないのでしょう。

最後に引用されている中川八洋筑波大教授の言葉(著書からの引用):"『サルの子孫』という非科学的な神話(神学)は、人間の人間としての自己否定を促しその退行や動物化を正当化する"だそうです。

別に猿と人間が共通の先祖から進化したからって、人間としての自己否定を促すことにはならんでしょう。こういう主張は単に"自分はその程度にしか人間ではない"と認めているだけにしか聞こえないので、恥ずかしいと思いますけど。


2005/09/27 電子レンジの周波数

カテゴリー: サイエンス

 何年も前になるのだけど、天羽さんに「水商売ウォッチング」のセミナーをしていただいたとき、水は非常に広い周波数範囲のマイクロ波を吸収することを知った。それがどういう意味を持つかというと、「電子レンジの周波数は、水が特異的に共鳴する周波数ではない」ということである。

 この点はかなり多くの人が誤解していると思う(僕も誤解していた)。先日、会話の中でちょっとそれに関連する話題が出たので、思い出したから、書いておくことにする。実は、「かわいい物理」でもその話が出て、うっかり微妙に正しくないことを口走ったような気もする。ごめんね。大筋はまちがってないので。

 もちろん、以下はマイクロ波や水の専門家なら先刻ご承知の話なので、笑って見逃してください。

 実際、水は1GHz程度以上のマイクロ波ならどんな周波数のものでも吸収して、熱に変える。電子レンジの周波数である2.45GHzをとりわけ効率よく吸収するというようなことはなくて、むしろさらに高い周波数はさらに効率よく吸収する。

 では、なぜ2.45GHzという周波数に決まっているのかというと、これは電波法上の制約による。無線以外の用途に使う場合は、使ってもいい周波数帯が限られている。そのうちで、水を加熱するのに使えそうな周波数が2.45GHzということである。電波法上オッケーで、かつ水を加熱できる周波数ならいいわけで、実際、アメリカの電子レンジは900MHz帯を使っているらしい。2.45GHzよりは吸収効率が悪いはずだが、いろいろな理由があるのだろう。いずれにしても、周波数が二倍以上違っていても、問題なく電子レンジとして使えることははっきりしている。

 そんなわけで、2.45GHzでなければ水が暖まらないというのは全くの誤解なので、その誤解に基づく議論は無意味である。

 なお、天羽さんの講義ノートは↓にあります。

http://wwwacty.phys.sci.osaka-u.ac.jp/seminars/Amo.pdf


2005/09/22 入試問題とかテレビ局とか

カテゴリー: ニセ科学,水からの伝言

江本本を入試問題に使った中学からはお返事をいただけてません。9/13に二度目のメールを送ってみたのですが。読まれてないのか、返事が届いてないだけなのか、無視されたのかはわかりませんが。

関テレの問い合わせ窓口は、見てない番組についての質問には答えられないのだそうで、現在別のルートを検索中。

というわけで、なかなか先へ進まないですね


2005/09/14 英語は難しくてわかりません

カテゴリー: ニセ科学

おいらには自然な英語なんて書けねえと思い知りました。

論文に書く英文の参考にしよう(あわよくばパクろう)とMolecular biology of the Cellを眺めていたら

Proteins fold into a conformation of lowest energy.

という文章を見つけてしまいました。

この単数・複数の関係はどうなってるのでしょうか。

意味としては

Each protein folds into its lowest energy conformation.

ということのはずなのですが。


2005/09/11 惑わされないための練習問題

カテゴリー: ニセ科学

ニセ科学のカテゴリーにいれるべきか教育にいれるべきか迷いましたが、「水伝」がらみのコメントと関連するので、とりあえずニセ科学で。

論理とか統計とかの基本的な話を知らないと、いろいろなニセ科学や怪しげな主張にだまされてしまいます。というわけで、練習問題。既にいろいろな人に見せたので、知ってる人も多いとは思いますが。

問題:

↓のグラフを見てください

これは、政府の統計資料を基に作ったもので、データは本物です。

縦軸は平均寿命ですが、では横軸はなんでしょう。そして、このグラフから得られる結論はなんですか

20.6:400:400:320:320:correlation2:left:1:1::


2005/09/07 百匹目の猿と戯れる

カテゴリー: ニセ科学,100匹目のサルなど

串間市の「百匹目の猿発祥の地」記念碑騒動(^^;)のおかげか、「百匹目の猿」の真実について、詳しい検証がネットに挙げられています。記念碑の功績かもしれん(^^

原論文の検証が

http://transact.seesaa.net/article/6007847.html

http://blackshadow.seesaa.net/article/6646210.html

Ron Amundsonの翻訳が

http://transact.seesaa.net/article/5570218.html

Elaine Myersの翻訳が

http://blackshadow.seesaa.net/article/6432489.html

こちらは以前からあったコンテンツ(僕のグリセリン話も引用してもらっているサイト)ですが、The skeptic's dictionaryからの翻訳が

http://www.geocities.jp/wakashimu/yota/saru.html

あとは、前に挙げた河合先生のインタビューを読めば充分でしょう。

こんだけはっきりと嘘であることが解明されているケースもめずらしいかも。それもこれもWatsonが科学者らしく(^^;)引用文献を挙げているからです。誰も読まないと高をくくったのかね。Watsonは(ある意味)偉い。

いずれにしても、この問題から得られる教訓は「真実はいつでも一次情報にある」ということですね。

串間の記念碑はやっぱり恥ずかしいし、なにより、日本の研究者たちが地道に観察して記録していった努力よりも単に口がうまいだけのWatsonや船井を選んだ(まさにこれは"選んだ"ですよ)という点で許し難い。


2005/09/05 ケンイチ君と科学

カテゴリー: 日 記

 瀬名秀明さんの新作「デカルトの密室」を読み始めて、ちょっと笑ってしまった。いきなりかたかなで書かれた"ケンイチ"という名前が目にはいったからだ。実は、僕が一年半ほど前に「細胞工学」誌のために書いた熱力学の解説記事でも、主人公(?)の名前はかたかなの"ケンイチ"君だったのだ。やっぱり"ケンイチ"はかたかなだね。

 ちなみに、僕が書いた記事にケンイチ君が登場するのは、こんな場面

........

「博士」と大声をあげて走ってきたのは,慌てものだが勇 気と情熱なら誰にも負けない助手のケンイチ君である.

「おお,どうしたね,ケンイチ君」

「博士,ついに発明しました.これを見てください」とケ ンイチ君はフライホイールとコイルと磁石を組み合わせた らしい奇妙な装置を取り出した.

「この装置を使えば,空間から無尽蔵にエネルギーが取り 出せるんです.これさえあればエネルギー問題はすべて解 決ですよ」

「ケンイチ君......」博士はため息をついた. 「それはだね,第一種永久機関といって実現不可能な装置 なのだよ.エネルギー保存則を忘れたのかね」

ケンイチ君は肩を落としてとぼとぼと戻っていったが, 十分と経たないうちにまた元気溌剌で走ってきた.

「博士,わかりました.エネルギー保存則は証明されてい ないんです.だから,エネルギー保存則に反する装置も不可 能ではありません」

「ケンイチ君......(ため息),どうやらインターネットの怪 しいサイトで妙なことを吹き込まれたようだな.確かにエ ネルギー保存則は数学的に証明されてはいない.しかし,物理法則とはそういうものなのだ.これまでのあらゆる実験 がエネルギー保存則の正しさを実証しているではないか. そもそもエネルギー保存則は別名を熱力学第一法則といっ て,熱力学という巨大な理論体系の一番の基礎になる法則 なのだ.それがそんな装置ごときでいちいち崩れていては 困るだろう」

ケンイチ君はまた肩を落としてとぼとぼと戻っていった.

数日後,「博士」と大声をあげながら走ってきたのは,か なり頼りないが決してくじけることのない助手のケンイチ 君である.

「博士,今度こそ大発明です.これを見て下さい」と取り 出したのは,やはりフライホイールとコイルと磁石を組み 合わせた装置らしい.

「この装置は,磁力を使って,部屋の空気が持っている熱 エネルギーを運動エネルギーに変えることができるんです. だから,外からエネルギーを与えなくても勝手に回り続け るんです.これならエネルギー保存則に反しませんよ」

「ケンイチ君......(ため息),それなら確かにエネルギー保 存則を破らないが,残念ながら第二種永久機関といってや はり実現不可能な装置だ.熱力学第二法則という法則が あって,そんな永久機関は作れないのだよ」

ケンイチ君は肩を落としてとぼとぼと戻っていったが, 十分と経たないうちにまた元気溌剌で走ってきた.

「博士,熱力学第二法則も証明されていないんです.だか ら,第二種永久機関は不可能ではありません」

「ケンイチ君......(ためいき),またしてもインターネット の怪しいサイトで妙なことを吹き込まれたね.熱力学は熱 力学第一法則と第二法則の2つを基礎に作られているのだよ.第二法則がそんなしょぼい装置ごときで崩れるようで は,熱力学が成り立たんと言うとるやないか!」

「しょぼいとはなんですか,博士.いくら博士でも許しま せんよ.しかも,最後だけ妙な大阪弁やし」

「しょぼいもんはしょぼいんだからしょうがない.そんな ことより,熱いお湯に氷を入れたらどうなるね?」

「話を逸らしてごまかそうとしたってだめですよ.そんな の考えるまでもありません.氷が融けてお湯がぬるくなる に決まってるじゃないですか」

「そうだろう.必ずそうなるというのが熱力学第二法則なのだ.逆に言うと,熱力学第二法則が崩れるようなら,水の中に冷たい氷をほおりこんで,氷のエネルギーで水を沸騰 させることだってできてしまうのだよ」

「そ,それは画期的な大発明ですね.早速作ってみます」

「ケンイチ君......(ため息),そやからそんな画期的な大発 明はできんと言うとるやないか!!」

....

 僕がかたかな書きの"ケンイチ"という名前を使ったのは、手塚治虫といしいひさいちのマンガからの引用である。もっとも、手塚マンガに出てくるのは"イチ"だけ漢字の"ケン一"だけど。いしいひさいちはたぶん手塚を引用したのだと思う。とにかく、かたかな書きの"ケンイチ"という名前には、そういう意味がある。決して名字はコンノではない。

 手塚の「メトロポリス」は「デカルトの密室」同様、ロボットものなので、瀬名さんも手塚から引用したに違いない。たぶん、先を読めばなんらかの言及があるのかと思いつつ