200802のブログ

記事一覧
カテゴリー別記事一覧

2008/02/29 Traffic jam without bottleneck
2008/02/27 江原啓之が旭川大学の客員教授になる件
2008/02/22 竹内薫氏の「ニセ科学を見破る」本を送って頂いた
2008/02/20 浜六郎氏の本を送って頂いた(ので批判する)
2008/02/04 苦節4年の論文
2008/02/03 血液型と性格3
2008/02/03 倖田來未舌禍事件または想像力の欠如について

2008/02/29 Traffic jam without bottleneck

カテゴリー: サイエンス

宣伝

 

"Traffic jam without bottleneck – Experimental evidence for the physical mechanism of formation of a jam",

Yuki Sugiyama, Minoru Fukui, Macoto Kikuchi, Katsuya Hasebe, Akihiro Nakayama, Katsuhiro Nishinari, Shin-ichi Tadaki and Satoshi Yukawa

(New Journal of Physics 3, 1 (March 2008) 016001)

が3/4(たぶんイギリス時間)にNew Journal of Physicsで公開されます(この記事を書いている時点ではまだ出ていませんので、あわててNJPにアクセスしないでください)。

円周上に並べた自動車が自然に渋滞を形成することを実験で確かめたという論文です。渋滞発生の本質はあくまでも自動車の密度であって、トンネルや坂のような「ボトルネック」は必須ではない、という(我々の従来からの)理論的な主張を裏付ける実験、という位置づけです。

この実験の話だけは西成さんの本にも出てるし、僕もBionicsという雑誌で紹介したことがありますが、論文がなかなか出なかったもの。

NJPはオープンアクセスジャーナルのひとつで、すべての論文は誰でも無料でダウンロードできます。

実験のビデオ映像もあるので、興味のあるかたはご覧ください。

学会などでご覧になったかたも多いでしょうが、ビデオだけでも面白いと思います。

今まではビデオが欲しいという要望に応えられなかったので、これでようやくビデオを公開できるてほっとひと安心。

NJPのウェブサイトは

http://www.iop.org/EJ/njp

また、この論文については出版元であるIOPがプレスリリースを出してくれるそうです。

英語のプレスリリースになりますが、興味があればそちらも。プレスリリースも3/4に出る予定。プレスリリースが出ても、新聞や雑誌が注目してくれなければ、「リリースのみ」になっちゃいますが。

日本ではプレスリリースが出ないので、ここに書いておきます。興味のあるかたは僕までお問い合わせください(^^

(ってことを事前に書いていいのかな。いいんだよね、きっと)

 

ちなみに気になるかたのために書いとくと、著者名順は責任者(^^)の杉山雄規さん(名古屋大)が第一著者で、その後は名字のアルファベット順に並べただけです。決して一番最後に名前の載っている湯川君が指導教員というわけではありません。素粒子分野では著者名を完全にアルファベット順にしますが、それは他分野では通用しないので、第一著者だけきちんと決めました。

もうひとついうと、この実験だけでは話は完結しません。実験は何度かやっていて、再現性はあると言えるのですが、これまでに言ってきたexperimentとdemonstrationの話でいうといささか微妙。あくまでも理論的な背景があることが重要です。研究費が取れたら、さらに詳しい実験をする予定。

 

[追記]プレスリリースはもう出たようです。


2008/02/27 江原啓之が旭川大学の客員教授になる件

カテゴリー: オカルト・スピリチュアル

これは大問題だと思うので、エントリーを作ります。

 

僕は「週刊朝日」で読みましたが、ネットでもすでに話題ですね。

旭川大学が新設の保健福祉学部の客員として江原氏を招く、という話。

終末期ケアに関連する話を年に1,2回講義してもらう、のだそうです。

 

江原氏の霊視がインチキであることについては、ようやく世間の論調も厳しくなってきたようです(生きている人を霊視したとか、BPOが批判したとか)。

しかし、旭川大学の件がそれ以前に決まっていたのだとしても(そうでしょうが)、だからしかたがない、というわけにはいかないですよね。

そもそも、霊視だのスピリチュアルだのの人を招くという発想がどうかしている。終末期ケアの問題で、きちんとした宗教家を招くのはありえますが、江原を呼ぶというのは常軌を逸している。


2008/02/22 竹内薫氏の「ニセ科学を見破る」本を送って頂いた

カテゴリー: ニセ科学

竹内さんの本を出版社からお送り頂きました。ありがとうございます。

タイトルは「白い仮説、黒い仮説」ですけど、なんかその上に「ニセ科学・・・」という副題がついてます。

もちろん、誰がどういう本を書いてもいいし、大事なのは内容だとは思います。

でも、竹内さんの本に「ニセ科学を見破る思考実験」と堂々と書かれていると、???と感じてしまいます。

竹内さんには、そうじゃなくて、普通の科学の話に徹していただきたいというのが、僕の希望。

 

まあ、竹内さんの本にまで「ニセ科学」と書かれるようになったというのは、我々のマーケティング戦略の成果として誇ってもいいのかもしれませんが。


2008/02/20 浜六郎氏の本を送って頂いた(ので批判する)

カテゴリー: 日 記

「金曜日」から「やっぱり危ないタミフル」という本が送られてきた。ありがたいことである。

批判している僕にわざわざ送ってくださったということは、「金曜日」としては、これを読めば僕が考えを変えるだろうという自信作なのか、あるいは適当に送っているだけか。いずれにしても、ありがとうございます。まだ全部は読んでません。

しかし、パンデミックについてどう書いているかは興味があったので、そこだけ眺めてみた。

「パンデミックはまず起きない」という小見出しが目を引く。浜氏によれば、スペイン風邪の主要な死亡原因はアスピリンだそうである。また「きわめて低い鳥インフルエンザの死亡率」とも書かれている。

結局、主張は

(1)鳥インフルエンザが新型インフルエンザに変異するとは考えにくい(2)パンデミックが起きるとは思えない(3)万が一、流行したとしても多数の死者が出るとは考えられない

ということかと思う(ついでに、タミフルとラムズフェルドの関係についても、この章に書かれている)

ひとつ、指摘しておきたい。タミフルが本当に危険な薬であるかどうかと、パンデミックが起きるか起きないかとはまったく独立な問題である。タミフルは対策であって、鳥インフルエンザから新型インフルエンザが出現すること自体とはなんの関係もない。

ここでの論調は、「タミフルさえ葬れるなら、パンデミックの危険を過小評価するのも厭わない」というものではないか。

新型インフルエンザのパンデミックはWHOも警鐘を鳴らし続けている重要な問題である。もし、「タミフルさえ葬れるなら(もうひとつ言うと、インフルエンザを危険な病気ではないと世間に思わせられさえするなら)」という理由で、パンデミックへの備えさえ怠らせる方向へ世間を誘導しようというなら、許し難い。この主張は、タミフル以外の備えや対策をも否定するものであることに注意するべきだろう。これでは、浜氏が「目的のためなら手段は選ばない」人と思われてもしかたないのではないか。とにかく、世論がその方向に流れないことを祈りたい。

津田敏秀さんはタミフルの副作用は有意にあると主張しておられたが、その一方で、パンデミックを見越した備蓄はするべきと言っておられた。というより、その目的に限るべき、と言っておられるのだと思う。それは見識である。

以下に朝日新聞に2001年12月29日付けで掲載された浜六郎氏の「インフルエンザが流行する季節がやってきた」と題する記事から引用する。家庭欄に連載された「薬の診察室」というコラムらしい。

全文は浜氏のビジランスセンターのウェブサイトで読める。

http://npojip.org/newspaper/asahi/20011229.htm

....................

 インフルエンザが流行する季節がやってきた。

 インフルエンザはA型、B型、C型、3種類のウイルスで起きる急性の感染症である。かぜと混同されやすいが、かぜとは違う。症状は発熱・鼻水・せきなどで同じだが、激しい型の流行時は、熱が39度以上になる▽頭痛や関節痛が強い▽感染力がきわめて強い。ふだん健康な人はまず問題ないが、高齢者や弱っている人、若くても解熱剤を多用し休まず無理したりすると、重症化しやすい。

.....

ここではインフルエンザが風邪ではないことが強調されている。全文読んでいただけばわかるが、この文章はなかなかよくできていると思う。

ところが、今回いただいた本の第一章は「インフルエンザはかぜ」である。中にも「かぜの一種」と明記されている。浜氏は2001年以降のどこかで、インフルエンザの位置づけを変えたらしい。その理由が知りたい。薬害を防ぐかどうかと、インフルエンザの位置づけとは無関係のはずだが、浜氏の中ではそれがリンクしているのではないかという疑念がある。だとすれば、「好き嫌いと事実かどうかとがリンクしてしまうニセ科学信奉者」とどこが違うのだろうか。

必要なのは「市民が自ら判断するための正しい情報を提示する」ことであって、そのための情報を提供できないのであれば、「市民の味方」ではない。インフルエンザを「風邪ではない」から「風邪の一種」に変更したことは市民に対する裏切りではないか。

 

とにかく、すくなくともパンデミックとインフルエンザの位置づけの二点において、浜氏の本は一線を越えたと思う。


2008/02/04 苦節4年の論文

カテゴリー: サイエンス

地味に「交通流」というか「交通渋滞」の研究もしています。

最近は西成さん(共同研究者です)の『渋滞学』なんて本が売れて、それなりに認知されてきた気もしますが。余談ながら、西成さんは本を出したので「世界一受けたい授業」に呼ばれて、生ほしのあきの前でしゃべったのですね。なんてうらやましい。僕もほしのあきに会いたい。閑話休題。

 

実は交通渋滞のサーキット実験という画期的な実験を4年前にやりまして、論文を書いたのだけど、これが通らない。画期的すぎたのか、まったく通らない。まあ、Natureから始めたので、しょうがないといえばしょうがないのですが、画期的だからNatureに載ると思ったんだよ。Natureも見る目がないね(^^

 

で、苦節4年、五つ目の雑誌でようやくアクセプトされました。めでたい。

最後はアクセシビリティを重視して、イギリス物理学会とドイツ物理学会が共同で出しているオンライン・ジャーナルNew Journal of Physicsに送りました。ここにアクセプトされて来月出ますが、この雑誌はいわゆるFree accessなので、出版されれば、誰でも無料で読むことができます。お暇なかたは、ダウンロードして読んでください(来月)。実験の動画もついてます。それだけでも楽しいと思います。

 

実験の話自体は西成さんの本にちょろっと書いてあるんだけどね。なにせ、論文がなかなか通らなかったので。


2008/02/03 血液型と性格3

カテゴリー: ニセ科学,血液型性格判断

「血液型と性格2」が1000コメントを越えて、読めなくなってきたので、続きはこちらにお願いします。

 

あくまでも続きなので、新規参入を考えておられるかたは、混乱を避けるためにまず「血液型と性格2」をすべてお読みください。

http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1191758412

 

ちなみに「血液型と性格2」は「血液型と性格」が1000コメントを越えたために作られました。したがって「血液型と性格2」を読むには「血液型と性格」の1000コメントを読んでいただく必要があります。

新規参入を考えているかたのために改めて言いますが、あなたの疑問とその答、あるいはあなたの意見は、ほぼ間違いなくその2000コメントの中に同じものがあります。

  

そんな大変なことはしたくない、というかたは、新規参入を控えてくださるよう、お願いします。

2000コメントを要約するなら、「血液型性格判断は誤り」「血液型性格判断肯定派として有名なABOFAN氏の論理はでたらめ」ということです。

普通のかたにはそれで充分でしょう。


2008/02/03 倖田來未舌禍事件または想像力の欠如について

カテゴリー: ニセ科学

自分の耳で聴いたわけじゃないんですけど(ネットに落ちてるのでしょうが)、世間で大きな話題になっているとおり、くうちゃんが「35歳になるとお母さんの羊水が腐ってくる」とラジオで発言して、その件について謝罪してました。

この子は羊水がずっと(妊娠してなくても)お腹に溜まってると思ってたんですかね、という突っ込みはさておき、この話題をとりあげるのは、「想像力」の話がしたいからです。自分は35までまだまだあるから、自分が35になることが想像できていないのはしかたない。しかし、自分のファンには35以上の人もいるだろうに、その人たちが発言をどう捉えるかが想像できていない。ファンじゃない人のことはそもそも想像の範囲にないのかもしれないけど、世間には35以上の女性がたくさんいることが想像できていない。

まあ、ちょっとした想像力があれば、ラジオでできる発言ではないですよね。

で、想像力が足りないからこそ、「水からの伝言」を肯定できるのだろうなあと思うわけです。「水からの伝言」は健全な想像力の産物ではなくて、強いて言えば妄想力の産物だろうと考えるのですが、どうでしょう。少なくとも、ちょっとした想像力があれば「水からの伝言」を持ち上げることがなぜまずいか(科学的知識と関係なく)、わかるんじゃないかな。あれを「いい話」と思いこんでしまうのは、想像力が足りないせいだと考えるのですが、いかがでしょう