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2011/02/10 募集: ジョーンズのナノテルミット論文の解説
2011/02/10 『ZERO 9/11の虚構』

2011/02/10 募集: ジョーンズのナノテルミット論文の解説

カテゴリー: 陰謀論,9.11陰謀論

スティーヴン・ジョーンズたちが書いた「911の粉塵からナノテルミットの証拠が見つかったよ」論文というのがあります。これまでにも何度か話題になったものなので、おなじみかもしれません。査読を通った論文として陰謀論のみなさんには人気なのですが、掲載雑誌の編集長が怒って辞任するなど、実にばかばかしい感じを醸し出している代物です。

オープン・アクセスのWeb雑誌なので、以下のURLにアクセスすれば誰でも無料で読めます

http://www.bentham-open.org/pages/content.php?TOCPJ/2009/00000002/00000001/7TOCPJ.SGM

ジャンク・ジャーナルに載ったジャンク論文だから、科学者の常識でいうと、誰の目にもとまらず、誰からも支持されず、さりとて誰からも反論されず、単に無視されたまま忘れ去られる運命にある論文でしょう。そもそも編集長が「自分が知らないあいだに掲載された」と怒って辞任するような論文を「査読に通った」と言っていいのかどうか、怪しいものです。そんなわけなのですが、陰謀論的にはこの論文が「査読を通った学術論文でナノテルミットの証拠が明らかにされた」として、最重要文献扱いなのですね。「誰からも正式には反論されないくらいくだらない」という科学業界の常識とは違い、「誰からも反論がないから正しい」ということになっているようです。そんなこと言ったら、世の中にある数多のばかばかしい論文は、みんな正しいことになっちゃいますが。

というわけで、大変心苦しいのですけど、奇特なかたの協力をお願いします。この手の分析をご存知の研究者のみなさま、ちょっとこの論文に目を通していただいて、問題点を指摘していただけないでしょうか。

以前twitterにも書いたので、何人かのかたからはメールでコメントをいただいていますし、温泉カワセミさんにはだいぶ以前のエントリーでかなり詳しく議論していただきました(せっかく見つけていただいた参考サイトが、今はリンク切れになっていたりして残念なのですが)。

skeptics' wikiにも詳細に記述されています

http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=%A5%CA%A5%CE%A5%B5%A1%BC%A5%DE%A5%A4%A5%C8+%A1%CA911%B1%A2%CB%C5%CF%C0%A1%CB

充分といえば充分ではあるのですが、この手の分析に詳しいかたがたのご意見をさらにいただけるとありがたいです。

この論文に掲載されているデータからはどの程度のことが言えて、論文の論旨のどこまではオッケーでどこがダメなのか、みたいな。

たとえば、微小鉄球が出てきますが、これが酸化鉄なら、九分九厘鉄骨が削れた鉄粉が燃えたものですよね。それで説明がつかない鉄が発見されているといえるのかいえないのか、僕にはデータの見かたがわからないので、よくわかっていません。酸化鉄だと思うんだけど

研究者にとっては、ばかばかしくて読んでられない論文だとは思うのですが、ぜひともよろしくお願いします


2011/02/10 『ZERO 9/11の虚構』

カテゴリー: 陰謀論,9.11陰謀論

行きがかり上、『911事件を検証する公開討論会』というのに出ることになってしまいました。だんだん、気が重くなってきました。

http://911social.net/

準備のためのwikiというのがあります。たくさん書きましたが、暗い気分になるばかりです

http://911social.net/wiki/index.php

この話はまた後日書きます。

興味のあるかたは、見に来てください。

また、討論会はたぶんustream中継されると思います。本当はニコ生での中継を考えたのですが、全員の同意は得られなかったので

さて、そんなわけで、暗い気分をさらに暗くする大デタラメ映画『ZERO 9/11の虚構』を見ました。いや、こんな映画を見る必要なんかないし、そんなことは見る前からわかっていたんですけど。

頭から終わりまで、デタラメばかりの映画です。爆発音が実際の音じゃなくて効果音だったり、肝心なところは妙なアニメでごまかしたり、ドキュメンタリーの体をなしてない。

事実らしい事実なんかかけらもなくて、しかも、とっくに論破されつくした問題ばかりをあたかも未解明であるかのように並べるだけです。

でも、プロパガンダとしてはよくできています。

ネットを見ると、この映画を真に受けてしまった人たちも結構多いみたいです。映画館はそれなりに混んでいたし。メディア・リテラシーってやつの問題なんでしょう。困ったものです。

ダリオ・フォーが楽しそうに陰謀論を語るところを見ていると、なんとも言えない嫌な気分になります。この人は単なる「陰謀大好きおじさん」なのでしょう。ノーベル文学賞ですけどね。この人のしゃべりを見れば、この映画がいかに信用ならないか、すぐにわかりそうなものですけど、陰謀論を信じたい人たちはそうは思わないのでしょうかね。

一番許しがたいのは、配給したきくちゆみさんやパンフレットに解説を書いた童子丸開さんは「内容に誤りがあること」を知っていたのに、字幕でもパンフレットでもなんの注釈もつけていないことです。これはひどいよね。内容を信じているのならまだしも、間違いと知っていて隠すのはないよね。それって、もはや間違いじゃなくて「嘘」でしょう。それは、以下に書く「5mの穴問題」なんですけどね。

なんでも、東京で上映したときには、「5mの穴」は誤りだというチラシを配布したそうですが、大阪ではそんなものはなかったし、たぶん他の地方でも配られてないのでしょう。東京だけはチラシを配るって、どういうことですかね。

この「5mの穴問題」は日本語字幕製作の時点でもはっきりわかっていたし、パンフレット製作の時点でもはっきりわかっていました。童子丸氏はパンフレットの解説にこれを「書かなかった」と認めています。でも、スペースの都合なんかじゃないのですよ。だって、その「解説」の下にはずいぶん広い「無駄スペース」があるのだから。だから、知っていたのに敢えて書かず、ただ、ごく一部の観客にだけチラシを配ったわけ。

これはひどすぎるよね。

嘘だとわかっていることをそのままなんの注釈もなしに伝えて、「真相究明」もへったくれもないと思います。見て、真に受けちゃった人こそ怒るべきですよ。

いや、「5mの穴」以外にもたくさんの自明な誤りがあるので、たぶん童子丸氏はほとんど全部知ってるんじゃないかな。あれだけ911に詳しい人が知らないはずはないから。

そんなこんなで、暗い気持ちになるわけです。(1)嘘ばっかりの映画 (2)事実を隠蔽している (3)真に受ける人がたくさん、ですから。せめて、嘘や間違いは訂正するのが筋ってもんです。

なにがどう間違っているのか、詳しくはmsqさんの解説

http://www.nbbk.sakura.ne.jp/911/zerov.html

skeptics' wiki

http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi

奥菜さんの『陰謀論の罠』、ASIOSと奥菜さんの『検証 陰謀論はどこまで真実か パーセントで判定』に収録された長澤さんの解説などを読んでいただければよくわかります。

以下には、『ZERO 9/11の虚構』から、5mの穴以外のペンタゴン関係の自明な間違いをいくつか列挙しておきます。ありていに言うと、ペンタゴン関係の話はほとんど全部間違いです。これはひどすぎる。

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(1)ペンタゴンには5mの穴しか開いていないので、ボーイングが突入したはずがない

今さらこれはないよね。5mしかないように見えるのは、肝心の大きな穴が消火の水で隠れて見えないからで、実際にはペンタゴンに30m弱の穴が開いていたのは周知の事実。きくちゆみさんも童子丸さんもとっくにご存知の事実じゃないですか。

(2)ペンタゴンにはボーイングの破片が見つからない

ペンタゴンにはボーイングの破片も部品も乗客の遺体も残されていたので、これもまったくの嘘。これもきくちゆみさんも童子丸さんも知らなかったらおかしいくらいの周知の事実。

ムサウイ裁判で提出されたエンジン部品の写真

http://www.vaed.uscourts.gov/notablecases/moussaoui/exhibits/prosecution/P200030.html">http://www.vaed.uscourts.gov/notablecases/moussaoui/exhibits/prosecution/P200030.html

その他の写真はここなど

http://911research.wtc7.net/pentagon/evidence/photos/index.html

同じく遺体の発見場所

http://www.reopen911.info/flash/Pentagonscene.html

実はムサウイ裁判で提出された検察側資料の中には遺体の写真もあります。見ないほうがいいですが(上の「その他の写真」にもあるので注意)、「ある」ということだけは書いておきます。リストは以下

http://www.vaed.uscourts.gov/notablecases/moussaoui/exhibits

(3)ペンタゴンは飛行禁止空域P56にあって、軍の識別信号を出さない飛行機が侵入すると、即座に地対空ミサイルで撃墜される

ZEROでは、何人かがこの話をしている。軍事ジャーナリストという肩書きの人もいたような気がする。

でも、問答無用で民間機を撃墜するはずがないでしょう。それだけでも、この話がナンセンスな嘘だということはすぐにわかるはずです。

実際にはP56はホワイトハウス周辺と副大統領官邸周辺の狭い領域に設定されていて、ペンタゴンはP56からずいぶん離れています。ペンタゴン上空はそもそも飛行禁止空域ではないわけです。

飛行禁止区域P56がどのあたりの空域かは、Donald Reagan National Air Portのサイト

http://www.faa.gov/ats/dca/dcaweb/p56.htm

に書かれています。図を見ればわかるように、P56はそれほど広くなく、ペンタゴンはP56に含まれません。

ペンタゴンの近くにはロナルド・レーガン国際空港があって、民間機が頻繁に離着陸しています。ちょっとした間違いでうっかりP56に侵入した民間機を問答無用で撃墜するというルールだとすると、かなり頻繁に撃墜事件が起きているはずです。実際には、禁止空域(ペンタゴンは含まれない)にうっかい侵入したパイロットは「免停」です。撃墜ではありません。

FAAのセキュリティ情報

http://www.faa.gov/news/fact_sheets/news_story.cfm?newsId=6297&print=go

には空域侵犯がかなり頻繁に起きていることと「免停」の件が書いてあります。

ペンタゴンが飛行禁止空域に含まれないことくらい、ちょっと調べたらわかる話じゃないですか。民間機が問答無用で撃墜されているかどうかなんてのも、調べるまでもないナンセンスじゃないですか。なぜ、そんな見え透いた嘘をつくのか、まったく理解できません。

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Most of these security-related violations result in 30- to 90-day suspensions of the pilots' FAA certificates.

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地対空ミサイルについては、映画の中でも謎のアニメーションで紹介されただけです。だって、実在していなかったんだから。こうなると、噴飯ものでしょう

(4)旅客機がレーダーから消えて、完全に応答がなくなったら、即座に撃墜される

空域侵犯もそうですが、民間機を即座に撃墜するなどという狂った規則はありません。そんなことは、考えるまでもないのではないでしょうか。こんなナンセンスを信じるようでは、困ります。

普通のハイジャック事件では、犯人の目的はどこかに着陸して何がしかの要求をすることなので、撃墜する必要なんかありません。

(5)戦闘機のパイロットは自分の判断でハイジャック機を撃墜できる

民間機をそう簡単に撃墜できるわけがなくて、大統領などの命令が必要です。911では副大統領が撃墜命令を出しましたが、その時点でハイジャック機はもう残っていませんでした

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民間機を問答無用で撃墜するだなんて、いくらなんでもめちゃくちゃです。彼らの言い分を信じるなら、もっと頻繁に民間機が撃墜されているはずですよ。だって、レーガン空港が近いんだもの。

そんなことくらい配給したきくちゆみさんも解説を書いた童子丸さんもわかっていて当然でしょう。ひどいよね。

嘘ばっかりなのに、最後は被害者の父とか仲間をなくした消防士とかの声で終わる。最低です。

もちろん、心に大きな傷を負った彼らが陰謀説にのめりこんだとしても、それはしかたないと思います。この人たちを責めるべきではない。

でも、楽しそうに陰謀を語るダリオ・フォーとかスティーヴン・ジョーンズとかは許せないよね。製作者も配給者も解説者も許せないよね。陰謀好きが被害者を利用してるだけだよね。

とにかく、嫌な気分しか残らない、最低の映画でした

でも、この映画を真に受ける人もたくさんいるらしいから、びっくりさせられます

お願いだから、こんな馬鹿な映画を見て、信じないでくださいよ。

被害者の父には同情すればいいんです。でも、そのこととそれ以外の映画の内容とは、まったくなんの関係もない。

メディア・リテラシーの練習問題みたいなもんですよ。