というわけで、ししゃかもグループによる学会発表があったようです。
僕は息子の運動会を優先(当然)したので、見てないですが。
見たかたのご報告をぜひ。噂では大入りだったそうですけど(^^;
ニュースで知ったのですが、阪大生命機能研究科(実は僕も兼任教員)の研究公正委員会は、捏造事件(最近のほう)について、杉野教授が単独でデータの捏造・改竄をしたという結論を出したそうです↓
http://www.asahi.com/science/news/OSK200609220087.html
しかも、実は捏造論文はもう一本あったとのこと。
定年間近の教授が、いったい何を焦ることがあったのか・・・あるいは定年間近だからなのか。
前回の捏造事件では、下村・竹田両教授に対する甘い処分が柳田充弘さんのblogなどで痛烈に批判されて、全国的に話題(もちろん悪い意味で)になりましたが、今回は教授が捏造の当事者であり、しかも自殺者まで出しているだけに、さすがに甘い処分という選択肢はないでしょうね。
捏造教授の処分は粛々と行ってもらうとして、それよりも、巻き込まれただけの助手がなぜ自殺したのか、その理由をなんとか解明してほしいところです。
ひっそりと朝日新聞に記事を書きました。今日の夕刊(夕刊のない地域は明日の朝刊)です。内容は「物理教育学会誌」に書いた物理学会シンポジウム報告の短縮版みたいなもんですので、目新しくはありません。
田口さんが主宰されていた「科学ML」が終了しました。
長い歴史のあるMLだったのだけど、ここしばらくはそれほどのトラフィックもなく、さほど活気のあるMLではなかったと言っていいでしょう。
ところが、つい最近になって、いきなりトラフィックが増えたと思ったら、トンデモな妄想だか陰謀論だか、そんなのがやたらと配信されるようになりました。基本的に元凶は一名+αなんですが。
結局、それが原因でMLの閉鎖に至ったわけです。
blogなどと違い、ML参加者には有無を言わさずメールが送りつけられてくるので、トンデモなのが来続けたら参加者は閉口しますわね。
「科学ML」自体はだいぶ以前に使命を終えていたとは思うものの、妄想系トンデモさんがたった一名でML全体を閉鎖に追い込めるというのは、考えさせられます。やっぱり、イエローカード三回で退会処分とか、そういう運営にしないとだめなのでしょうね。
もちろん、この一名はもう充分に札付きだから(さまざまな科学系MLを混乱させたので)、どこのMLも門前払いにするのでしょうが、このトンデモさんが最後のトンデモさんとは限らない(ここは、志村喬の声で読んでね)わけで。
ちなみに顛末(というより、周辺事情)は左巻さんのblogや三中さんの日記↓で読めます
http://cse.niaes.affrc.go.jp/minaka/diary.html
Journal of Physical Society of Japan編集委員会からの告知を転載します。
僕は学会に参加しないことにしたので、出席できませんが、興味のあるかたはどうぞ。インパクトファクターとは何か、という話は知っておくといいかもしれません
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インフォーマルミーティングのお知らせ
〜 インパクトファクターと論文検索の最新のトレンド 〜
秋の物理学会(千葉大学会場)の機会に、次のようなインフォーマルミーティングを 開きます。皆様の参加をお待ちしています。聞いて面白く、しかも役に立つ話を2名の方にお願 いしました。
話題提供:
(1) 「インパクトファクターのメカニズム」 桑原真人(物理系学術誌刊行協会)
(2) 「研究に役立つ電子版論文の検索法」 五十嵐亮(東大理学部)
日時:9月23日(学会初日)12時20分から13時30分〔昼休みの間)
場所:WH会場(千葉大学工学部17号館214)
なお、昼食時間と重なりますですので、先着70名分の弁当(無料)を用意いたします。
世話人: 斯波弘行(JPSJ編集委 員会)
へえ、こういう企画をやってたんですね↓
http://www.senrigan.net/bloodmind/
ぐぐってみると、とっくに各所で話題ですね。単に乗り遅れていた模様(^^
(ちなみに僕は妻の人のmixi日記で知りました(^^)。妻の人はapjさんのブログで知ったそうです。あれれ?(^^;))
参加者4,835,812人という数字が桁はずれに大きいので、今後、影響力を持つ結果になるかもしれません(ネット調査につきものの問題は多々あるわけですが、それでもこの数字はすごい)。
テレビの「テスト・ザ・ネイション」でも50万人ほどのデータがとられて、IQ(と称されているものがなんであるかはさておき)と血液型とはほとんど関係ないという結果が出ていました。さすがテレビは「数」が違うと驚きましたが、あんまり影響力がなかったのかな。
でも、今回のは「IQ」じゃなくて「心理検査」だから、影響力あるかも。
性格心理学研究者の意見がききたいところです。
実は、僕はこの本の帯に推薦文を依頼されたのですが、それまでの作品をひとつも読んだことがなかったので、丁重にお断りしたのでした。
注:
コメントが1000を越えてしまい、大変なので、続きのエントリー「血液型と性格2」を作りました↓
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1191758412
コメントの続きはそちらへ。
サイエンス・カフェが流行ってるんですけど、流行ってるからってんで、「大学挙げて」とか「研究科主催で」とかでやっても失敗するんだよね。「易しく話そう」って本気で考えてる人がやらないと、まったく逆効果でしょう。逆効果になるくらいなら、やらんほうがまし。
伊勢田さんの日記↓の8/18のとこ読んで、その点に激しく同意。
http://www.yonosuke.net/~iseda/diary/?06081807
やる気のある人たちがボランティア・ベースでやるのが正しいと思う。
僕は2002年から断続的にカフェで科学の話をしています。こないだの「懐疑思考」が12回目かな。この企画のポイントは、「どんなネタもすべて僕がしゃべる」ところにあります(^^。専門じゃない話も、がんばって勉強して、それをなんとかして噛み砕いてしゃべる。
さすがに「光量子仮説」のときは、みんなから「今回は分からなかった」と言われてしまいましたが(^^;。
次回は「量子テレポーテーション」なので、またまた勉強しなくては。もっともマイクル・クライトン「タイムライン」の文庫版に量子テレポーテーションの解説を書いたのは僕だったような気もするのですが・・・
「ニセ科学フォーラム」での配付資料を
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku
の下に置きました。基本的には過去の文章の切り貼りが多いので、目新しい部分はあまりないと思います
スライドはまた後日
物理学会でもニセ科学フォーラムでもA.C.クラークの第三法則「非常に進んだ科学は魔法と区別がつかない」を引用して、さらに「科学が魔法に見えるなら、魔法は科学と区別がつかない」と言いました。これは「科学を魔法のように伝えてしまうことは、ニセ科学を科学に見せる手助けをするだけだ」という趣旨でした。なぜなら、ニセ科学というのは結局は魔法だから。特に「波動測定器」なんてものは「魔法の器械」であると、以前から指摘しています。
ふと、クラークの第三法則の原文はなんだったかなと気になって、 wikipedia (英語版) を調べたところ、テレビシリーズ Dr.Who の中に、やはり第三法則の逆として "Any sufficiently arcane magic is indistinguishable from technology" というセリフがあることが分かりました。がちょーん(^^、おいらは Dr.Who だったのか。
あ、ちなみにクラークは "technology" と言っているのであって、 "science" とは言っていないので、実はちょっと趣旨が違うかもしれないのですが、まあそこはそれ。
apjさんのブログに書いたほうがいいのかもしれませんが、長くなるのと、これはこれで長い議論になるかもしれないのでここに。
「水伝」に対して反証実験をするべきかどうかについては、このブログでもずいぶん前に長い議論がありました。僕はずっと「反証実験不要」説で、さらにいえば「迂闊な反証実験をするのは却ってまずい」という主張をしてきました。この点は「ニセ科学フォーラム」でも強調したつもりです。これに対しては、「水伝」批判者側からも「検証せずに否定するのは科学的態度ではない」と言われたのですが、そんなことはないと今でも考えています。むしろ、「水伝」ごときを否定するのにいちいち「検証」しなくてはならないと考えるほうが問題でしょう。
まず、はっきり言っておきたいのですが、誰がどれほど真剣に反証実験をやってみせたところで、江本グループは決して主張を撤回しません。単に「科学ではなく、ファンタジーだ。だが、事実だ」という主張を繰り返すだけでしょう。あるいは超心理学でいう"山羊・羊効果"のように「水に対する感謝の気持ちがない人がどれほど実験しても、水は本当の姿を見せてはくれません」とでも言い出すか。なにしろ、事実ではないと認めてしまえば、彼らはこれまで築いてきたすべて(つまりビジネスですが)を失うわけですから。実験できちんと反証すればよいというのは「科学のルール」に則って議論できる人に対してのみ有効な話で、そもそも「科学のルール」の外で何かを主張している人には通用しない話です。
反証実験の難しさとしては「何をどう実験すれば"反証"したことになるのか、はっきりしない」という点が挙げられます。これは、過去にこのブログで延々と議論されたことです。みなさん「こういう実験をすれば反証になる」といろいろ提案されたのですが、僕らが勝手に「これで反証だぜ」と主張したって、相手がそれを認めなければしょうがないわけです。もともと「水伝」の実験結果はexperimentとはとても呼べないものですから、どんな反証実験に対しても、なんとでも言い逃れることはできます。迂闊な実験で「反証された」と主張しても、通じません。
ちなみに僕はmixiで信奉者のみなさんに「どういう実験をすれば、反証されたと認めるか」と問いかけましたが、特に提案はありませんでした。信奉者は信じる気まんまんですから、反証なんて考えたこともないのです。
といって、科学の側にいる人にとっては、「水伝」など、実験するまでもない嘘ですから、科学の側に向けて反証実験をする必要はありません。
では、なぜ僕らは検証せずに「水伝」を否定していいのかと言えば、それは彼らの主張があまりにもとんでもないからです。僕らは「とんでもなさ」の度合いをきちんと考えなくてはなりません。たとえば、「血液型性格判断」を否定するにはやはり検証実験が必要で、事実、性格心理学の分野では検証が行われ、その結果として今では否定されています。つまり、「血液型性格判断」の主張はその程度の「とんでもなさ」です。
「水伝」の主張は、結局「言葉の"意味"や"内容"が物質に物理的影響を与える」ということです。これは、現代の物質科学の常識に完全に反しています。仮にこれを事実と認めるとするなら、物理学はかなり深い部分からの書き換えを迫られます。そのくらい「水伝」の主張は強いのです。正直な話、本当にそんなことがあるなら、水の結晶なんていう話をしている場合ではありません。あらゆる物質に「ありがとう」と言ってみなくてはならないでしょう。
もちろん、実験が本当に有無を言わせない説得力あるものなら、物理学者は(不承不承であれ)物理学の体系を再検討するのですが、さて、それほどの実験を見せてもらっているかといえば、そんなものはありません。たかだか数冊の写真集があるだけです。
フォーラムでユリ・ゲラーの話題が出ましたが、本当に超能力があるなら、スプーンなんか曲げてる場合ではないはずです。たかだかスプーンを曲げる程度のことで超能力と言われても困ります。スプーンなんて力を加えれば曲がります。
僕たちは「とんでもなさ」をきちんと考えて、本当に検証実験が必要かどうかを判断するべきなのです。
半信半疑くらいの人に対しては「検証実験」が有効かもしれない・・・そうかもしれません。しかし、それで「嘘だったんだ」と信じるようでは、いずれまた反対に転ぶ可能性大でしょう。
むしろ、なぜ反証しなくても嘘と言っていいのか、その論理をきちんと伝える努力をしなくてはならないのだと思います。
「ニセ科学フォーラム」関連で、「理系」vs「文系」という話になりつつあるようですが、それは困るのでひとこと。
なんでそんな話になったのかというと、つらつら思い返すに、たぶん「初等理科教育についての大事なことを決めている人たちが、科学の本質を理解していない」ということからではなかったでしょうか。「これは難しいので削る」というのはいいとしても、その「難しさ」の基準が科学者から見ると理不尽に過ぎるわけです。科学は「かんがえかた」や「りくつ」が大事なのに、表面的な「難しさ」で削られては、「かんがえかた」が身につくわけもなく、理科は単に暗記ものになっていきます。
左巻さんがこの問題の専門家ですから、かなり詳しく説明してくださり、現状があまりにもひどいということを参加者は再認識したわけです(田崎さんが江沢先生の慨嘆を紹介してくれたことも大きい)。
この話がたぶん「理科教育の決定権を文系に任せていいのか」という憤り(^^;)につながり、討論がなんとなく「文系ってやつは」的なトーンになったのではなかったか、と思います(もちろん、それに加えて、これまでのさまざまな個人的理不尽体験が走馬燈のように頭をかけめぐった人が多いのでしょうが)。
もちろん、この点については、僕も大きな問題だと考えていて、初等理科教育は徹底的に改めるべきだと思います。少なくとも、あの江沢先生の意見ですら聞いてもらえないという状況は、なんとかしなくてはならない
それはそれとして、一般論としては、ニセ科学問題を「理系vs文系」的な二分法で語るべきではありません。「文系が悪い」というだけの話なら、あきらかに理系の大学教授の肩書きを持ちながら「ニセ科学」を吹聴してまわっている人たちを理解できません。
専門家でなければ自信を持って答えられないような問題はありますが、理系だって専門分野以外は素人みたいなもんです。「血液型性格判断はニセ科学」ということをどうしても認めたがらない科学者・医学者もいくらでもいるわけです。
「水からの伝言」のように、ニセであることを見抜くのに理科の素養が必要とは思えない問題もあります。こんなものに理系も文系もない。必要なのはもっともっと低レベルの常識だけです。
まあ、そういうわけです。
ことさらに「理系vs文系」の対立を煽る意味はないし、そんなことをしても「あっちの人たち」の思う壺ですから。
ただ、理科教育の問題はなんとかしなくしてはなりません
田崎さんのウェブサイトに「統計力学」の「標準的教科書」の草稿がアップされてしまった。むむ、困った。田崎さんには「標準的教科書」などにうつつを抜かさず、「決定版教科書」を書いてもらわねば、いろいろな意味で困るんである。
いろいろな意味で困る理由のひとつは、僕も「ごくあたりまえのわかりやすい教科書」を書いてることになっているからで(^^;、田崎さんの教科書なんか読んだら、ますます書けなくなるのである。
しょうがないので、僕も書きなぐった草稿の草稿(計算メモとも言う)をアップしてみる。ちなみに、途中までしかないうえに、最初のほうの何章かはまだ書いてません。つまり、途中から途中まで。最初が一番難しいんだよ。しかも、ずいぶん以前に書いてから、まったく手をいれてないので、とんでもないことが書いてあるかもしれぬ。
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/texts/toukei_rikigaku.pdf
これのどこが「わかりやすい」のか、という突っ込みはお約束
ときどき"文系のための「かわいい物理」"というトーク企画をやっているのですが、明日「懐疑思考」というテーマで話します。ニセ科学ネタからのスピンオフ企画で、ニセ科学を考えるためのヒントになるといいなと思っています。このblogの読者にはおなじみの話・・になっちゃうかもしれませんが
サイエンスカフェ かわいい物理+plus
「懐疑思考: だまされない」
日時/ 9月5日(火) 7:30pm〜9:00pm
参加費/予約800円、当日1000円(いずれも1ドリンク付)
講師/ 菊池誠(きくちまこと)
場所: 北浜ワークルーム http://www.workroom.co.jp/
ニセ科学の話をする際、充分に時間があればこの話をするのですが、時間がないと端折っちゃうので、メモ程度に。
もしかしたら、すでにこのblogかどこかに書いたことだったかも・・
....
夜道を歩いていたら、白いものがフワフワと浮いていた。なんて場面に遭遇したら、ぎょっとするわけです。ぎょっとしない人もいるだろうけど、僕はする(^^。恐る恐る近寄ってみたら、取り込み忘れた洗濯物が見えているのだったので、なあんだと思う。
普段「オバケなんか、いるわけがない」とどれほどかたく信じていたって、夜道で白いものを見て「オバケが出た」と思っちゃうかもしれないのですよ。一瞬後に、「そんなものはいない」と考え直したとしても、一瞬でも思ってしまったものはしょうがなくて、それはもう取り消せないわけです(^^。
実際にはオバケが出たのではないですが、「オバケが出たと思って、ぞくっとした」というのは事実として残ります。ぞくっとした感覚もしばらくは残る。これが個人的体験あるいは個人的事実。
これについて、「そんなこと、あるわけがない」と他人が否定してもしょうがないわけです。ぞくっとしたのはまぎれもない事実なのです。
だからといって、「オバケが出たと思って、ぞくっとした」人が非科学的・非合理的な人かと言えば、そうではない。一瞬後に「そんなものはいない」と考え直したなら、それでいいのですね。科学者だって、オバケが出そうな夜道は怖い(^^。
で、こういう「個人的事実」は、まぎれもない事実だけど、他人とは共有できない。今の場合、客観的な事実は「実は取り込み忘れた洗濯物」ということで、これは他人と共有できる。「事実」にはこのふた通りがあって、それはどちらもまぎれもない事実であるということは頭にいれておいていいでしょう。
ニセ科学は「個人的事実」と「客観的事実」の区別をつけていない場合が多いのですが、一方、ニセ科学批判をする側も「個人的事実」についてまで「嘘だ」と言ってしまう場合がままあって、それはそれでまずいのだろうと思います。「個人的事実」も、その個人にとってはあくまでも「事実」なので、嘘だと言われても困るだろうし、反感を買うだけでしょう。その「事実」は他人とは共有できないのだ、ということをうまく伝える努力をしたいものですが、難しいよね。
もちろん、「体験談商法」みたいなのについては、また別なんで。
ちなみに、僕は「個人的事実」を「私は見た!」と呼んでます。
今週はずっと大学院入試でへろへろですが、明後日は東京でニセ科学フォーラムです。みなさま、会場でお目にかかりましょう。