何ができればいいのか

「力学1」という科目は、運動方程式やエネルギーなどの「物理」と微分方程式の解法やテーラー展開などの「数学」が渾然一体となっているので、授業全体の流れがつかみにくいかもしれません。 「できてほしいこと」のキーワードだけでも分類して並べてみると少しは理解の助けになるでしょうか。 正直な話、僕の授業は進度が人並みはずれて遅いので、無駄な内容をまじえている余裕がほとんどなく、 結局「しゃべったこと全部」を理解して欲しいのですけど


できるべきこと

数学

基本

運動

最低限解けるべき運動方程式

エネルギー

解析力学


最終目標

大学での勉強は、将来「研究」をするための基礎なので、「入学試験」のようにあらゆるものが厳密に定義された懇切丁寧な問題を解けるだけでは足りません。それは最低限の目標。懇切丁寧な問題は解けて当たり前と考えましょう。

本当の目標は問題を解けることではなく、「理解」することです。 しかし、理解度をはかるには問題を解くくらいしか方法がないので、じゃあどういう問題が解けるようになるべきなのかを書いておきます。 「力学1」では、質点の運動について、「これこれの場合にその運動を議論せよ」といった程度の曖昧模糊とした問題設定に対して、何をどう定義して「何を求めるか」までを自分で考えて解答できるようになるのが目標です。厳密に解ける問題なのか近似しなければ解けない問題なのかといった点も自分で見極められる必要があります。

もっとも、最初からあらゆる問題についてそれを要求するわけにはいかないのですが(自分の過去を振り返っても、そんなことができていたとはとても言えない)、大学の四年間でそういうやりかたを身につけることを目標に、その第一歩としてできるだけがんばってみようということです。 というか、四年間での本当の最終目標は問題そのものを自分で設定できるようになること、でしょうね


問題を解く上での一般的注意


ものすごく大事かもしれない注意

授業の第一回で話したことだが、ほとんどすべての運動方程式は(手では)解けない。 これは運動方程式を解くという作業が結局は「積分」を計算することだからである。 これが微分なら、どんなに複雑な合成関数であっても順番に微分していけば最後には 結果にたどりつくのだが、それに対して、任意の複雑な合成関数の積分を遂行する 一般的な処方は「ない」。 運動方程式も同様で、任意に複雑な運動方程式を手で解くための一般的な方法は 存在しない。解けるものしか解けないのである。

二階線形についていうと、斉次方程式は特性方程式によって機械的に解けるのに対し、 非斉次方程式を機械的に解く処方はない。 したがって、「力学1」の範囲では、斉次方程式を即座に解ける能力は 要求するが、非斉次方程式は「ヒントを与えられたら解ける」で充分である。 非斉次方程式については「物理数学2」でもう少し詳しく扱う予定。

むしろ大事なのは、「振幅が小さい」などの条件を課すことによって、解けない運動方程式を 解ける形の運動方程式に近似することで、これは、できるようになってほしい。 典型はポテンシャルの底付近の運動を単振動で近似することである。

同様に、完全に任意の経路に沿った線積分など手で計算できるわけがない。 線積分は簡単な式で表される曲線上で積分できればよい(というより、それしかできない)