渋滞はなぜ起きる


菊池誠.


 年末も近づくと、例によって帰省ラッシュのことが頭に浮かんで、なんだか憂鬱になってくるかたも多いことと思う。特に自動車で帰省するかたは、あの大渋滞をどうやって乗り切ろうかと頭が痛いんじゃないだろうか。
 というわけでもないのだけど、今回は自動車の物理について書きなさいというお達しである。物理といっても、エンジンとか空気抵抗とかの話じゃない。自動車の流れについて考えてみたいと思う。車の流れの物理である。
 渋滞に巻き込まれていらいらしたときなんか、この話を思い出してもらうといいかもしれない。


1.とりあえず観測する


 ぼんやり道路を眺めていると気になることがある。車っていうのは、かたまりになって走ってくるみたいだ。しばらく車が来ないなあと思っていても、いったん車の姿が見えたら、今度は何台も何台も続けて走ってきたりする。町の中なら信号があるから当然かもしれないけど、高速道路でもそんなふうに見える。そういえば、高速道路を走っていると、ついさっきまでまわりにほかの車がいなくて気持ちよく走ってたはずなのに、いつのまにか前にも後ろにも車が詰まっていて、自分が車の集団に組みこまれちゃってることに気づいたりする。全体としては順調に流れているから渋滞というわけではないけど、なんとなくいらいらしたりして。
 本当はどうなってるのだろう。

 そう思ったら、実際に観測してみるのがてっとりばやい。普通、物理の実験・観測というと、きれいな実験室最新の実験設備を整えて、というイメージがあるかもしれない。そんなんじゃあ、素人がおいそれと実験してみるわけにはいかない。その点、交通なら、ちょっとでかけていけば現場で観測できる。とりあえず様子を見るだけなら専門家でなくたってなんとかなりそうだ
 さて、うちの理学部に最近新しいビルが建った。その屋上にのぼってみると、目の前に中国自動車道が通っていて、どうやら観測に最適である。というわけで、とりあえずビデオをかついで屋上にあがってみた。そこで撮ってきたのがこのビデオ
 どうだろう、やっぱり、車は集団になって走っているように見えないだろうか(注1しかし、車は集団で走りたがるといっても、集団を作りたくて作っているわけじゃない。運転しているのは互いに見ず知らずの人間なのだし、別段、打ち合わせをしたわけでもない。ひとりひとりが勝手な思惑で車を走らせているうちに、いつのまにか集団が形成されてゆく。どうやらそういうことになってるようだ。


2.渋滞はなぜ起きる


 ここで、よく耳にする素朴な疑問をひとつ。渋滞の先頭はどこか。
 実は、この問題にはふた通りの答えかたができる。その一。先頭がどの場所にいるかを知りたいのなら、ヘリコプターでも使って上から見ればだいたいわかる。たいていは決まった場所から渋滞が始まっている。その二。どの車が先頭か、という問題なら、先頭の車は時々刻々変わっているというのがその答。その意味は・・・それをこれから考えよう。

 さて、ラジオの交通情報を聴いてるかたなら、毎日毎日同じところが渋滞しているのに気づいてると思う。大阪だと名神高速道路天王山トンネルあたりが渋滞の名所として知られている。天王山トンネルを先頭になんキロ渋滞って毎日毎日聴かされてると、渋滞するのがわかってるんだったら行かなきゃいいのにっていう気もするけど、そういうわけにもいかないか。
 さて、この場合は、常にトンネルの入り口付近から渋滞が始まっている。トンネルに入るところでみんなが少しスピードを落すからだ。トンネルに限らず、みんながスピードを落してしまう場所があれば、そこが渋滞の発生源になる。高速道路だと、トンネルのほかに料金所、合流地点、上り坂の始まりなどがそれにあたる。工事や事故で車線の数が減ってる部分は、もちろん渋滞のもとになる。
 では、これで渋滞の発生する原因がわかったことになるだろうか。でも、考えてみるとトンネルの入り口だからって四六時中渋滞しているわけじゃないし、これといってはっきりした理由もなさそうなのに渋滞に出会うことがある。もう少しだけ複雑な事情がありそうだ。

 車の密度と流量の関係を測定したデータがある。どこでとったデータでも、まあだいたい図のような形になっている。


 これは本当の測定データじゃなくて、概念図です。測定場所や条件が違ってもグラフの形はだいたい同じになります。もちろん、数値はいろいろ変わります。


 これによると、車の数が少ないうちは数が増えるにつれて流量も増える。ところが、あまり数が増えすぎると、それが逆転する。それ以上は密度があがるほど、車は流れなくなる一方だ。いくら車がたくさんいても遅ければ流量は少ないはずだから、これは結局、さかいめの密度を越えると車の速度が急激に遅くなることを意味している。ここでの急激な変化は、自由な流れから渋滞状態への相転移と呼んでいいだろう。渋滞の発生が測定データにはこんなふうに現れてくるのである。

 というわけで、それ以上車を流そうとすると必ず渋滞してしまう限界密度があって、流量もそこで限界になるらしい。この最大流量(容量と呼ばれる)は道路によって大きかったり小さかったりするのだけど、容量の大きい道路から小さい道路への境目が渋滞多発地帯になっているのである。また、特定の渋滞多発地点でなくても、限界の密度以上に車がたくさん走ろうとすると、どこでも渋滞が発生する。ただし、その渋滞はトンネル渋滞などとはちょっと見かけが違っている。次は数理モデルを使ってそこらへんを見ていこう。


3.シミュレーションをしてみる


 さて、こういう対象をどう扱ったらいいだろうか。紙と鉛筆でどうにかなるはずもないから、思いつくのは計算機でのシミュレーションだ。計算機の上に道路を作ってやって、車を並べて走らせてみようというわけだ。
 では、それをどうするか。例えば、これが力学の問題ならニュートンの運動方程式というのがあって、それさえ知っていれば、原理的には物体の運動をシミュレーションすることができる。ところが、自動車はニュートンの方程式にしたがって走ってるわけではない。そりゃもちろん、加速度がどれだけなら何秒後の速度はいくらになる、という程度のことなら普通の力学と違うはずがないけど、じゃあその加速度がどうやって決まるのかという段になると、力学とはぜんぜん話が違ってくる。人間が運転してるんだから違って当然だ。というわけで、シミュレーションのためには、運転者の行動をモデル化してやらなくてはならない。
 そこで、たとえば、こんな考え方でモデルを作ってみるとまあなんとかそれらしいモデルができた。そのモデルを使ってシミュレーションをした結果を動画したので、見てもらおう。

 まずは、車があんまり多くないとき車を等間隔に並べたところからいっせいに発進させたのだけど、走っているうちにいくつかの集団に分かれてしまうのがわかる。やっぱり、車は団子になって走ってくるのだ。車の軌跡を描いてみると、遅い車に速い車が追いついて集団が形成されていく様子が、はっきりわかる。

[車の軌跡の図]

[車の軌跡]:これは、サーキット上での位置を横軸に、時間を縦軸にとった図。一本の線が一台の車の軌跡を表している。動画と同様、右から出た車は左から入ってくる。線の色は例によって運転者の気持ちを表す。


実は、どうやらこのような集団形成が1/f、ゆらぎのもと、になっているらしいこともわかってきた。

 次は車の数がちょっと多いとき一ヶ所、車が真っ赤になってる部分があるのが見えるだろう。ここは車が止まってしまっている場所だ。車間が詰まってきたのでしかたなくブレーキを踏んだのである。
 運転者の立場になってみよう。しばらくは前の車に合わせながらもまあまあスムーズに走ることができた。ところが、ふと気付くと前の車がブレーキを踏んで止まった。しょうがないので自分も車を止める。渋滞にはいりこんでしまったらしい。さて、しばらくそのまま待っているとやがて前の車が動き出したので、自分もアクセルを踏んで車を発進させる。渋滞を抜けたようだ。その後はまた何事もなかったかのように車は流れてゆく。
 どうだろう、皆さんが高速道路で渋滞に巻きこまれた経験をよく再現してるのじゃないだろうか。気がついたと思うけど、渋滞にはいりこんでから抜けるまで自分は動いていない。そのかわり、「渋滞部分」が後ろへすり抜けていった。動画でも赤い部分が車の進行方向とは逆向きに進んでゆくのが確認できるはずだ。これも軌跡で見るとはっきりする。これが、車の密度が道路の許容量を越えたために発生する渋滞の特徴である。渋滞は後ろへ進む。

[車の軌跡の図]

[車の軌跡]


4.それで・・・


 とまあ、計算機シミュレーションで車の運動がかなりリアルに再現できて、いろいろ議論できることがわかってきた。では、これで我々はなにを理解したのだろう。ちょっと考えてみよう。自動車の流れを観測するとき、僕達は多くの運転者が自由意志でさまざまな判断をした結果を見ているはずだ。それなのに、それが簡単なモデルで再現できてしまっていいんだろうか。人工知能を組み込んだわけでもない。ただ、いくつかの規則で車を動かしているだけなのだけど。
 所詮、車なんて頭を使わなくても動かせるんだ、といってしまうのもひとつの考え方だろう。あるいは、今のモデルで一見うまくいってるようだけど、それだけでは表しきれない深い現象があるのだ、と思っておくのもいいだろう。どちらをとるかは、今のところ趣味の問題なのだと思う。人間の行動を物理学の立場で扱うための方法論は、まだ確立していないのだし。


以下は本文からリンクされたテキスト


 いつもの田口さんからのご指名で書きます。田口さんみたいに面白く書けるかどうか自信がないけど、よろしくおつきあいください。なお、ご意見は
e-mail:kikuchi@phys.sci.osaka-u.ac.jp
まで。それから、
http://glimmung.phys.sci.osaka-u.ac.jp/kikuchi.html
にホームページを開いてますので、WWWを見られるかたは気がむいたらどうぞ。
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 僕は大阪大学の物理学科というところに所属していて、専門は物理学ということになっている。そんな物理の人間が交通渋滞になんの関係があるのか、不審に思うかたも多いかもしれない。物理の人がみんながみんなそんなことを研究してるわけではもちろんない。っていうより、物理学科でこんなことをやってるところは今のところ数えるほどしかない。
 交通工学なら、道路設計とか信号の制御とかある程度はっきりした目的があるから、まあわかりやすいとして、物理の人間がどうしてまたそんなものに興味を持つのだろう。普通の意味での「物質」という感じではないし、ましてや素粒子や宇宙ではない。強いて言えば、「振る舞い」を物理の対象にしようとしているということになるだろうか。
 最近、物質に還元されない「振る舞い」とか「マクロな現象」とか、そういうちょっと前なら物理学者が手をださなかったような問題を扱おうとする研究者が増えてきた。それは、鳥がどうやって群を作るかとか、バクテリアのコロニーがどうやって成長するかとかだったりする。車の流れを物理学の立場で扱ってみようというのも、そんな最近の流れのひとつだと思う。のひとつだと思う。もっとラジカルには、進化とか社会現象を扱おうという研究者もいて、複雑系などと呼ばれたりしている。いずれにしても、物理学の対象はもはや物質に限定されていないのである。
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 もっとも、これまでそういう研究がぜんぜんなかったわけではなく、ずっと昔から物理学者が交通を扱った例は散見する。たとえば、イリヤ・プリゴジンは60年代に交通に関する論文を書いている。そういう意味では、車の流れというのは折りに触れて物理学者の興味をひいてきた問題なのである。
 また、『続・物理の散歩道』にも車の流れについての議論が見られる。
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『物理の散歩道』
 ロゲルギストと名乗る日本の物理学者集団が書いた物理エッセイ。日常の身近な題材を物理の立場で議論する大変面白いシリーズ。「物理の散歩道」シリーズが岩波書店から、また「新・物理の散歩道」シリーズが中央公論社から出ていたけど、ひょっとしたら絶版かもしれない。僕は岩波のぶんを古本屋でそろえました。古本屋をまわる価値はあります。
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複雑系
 「複雑系」っていう言葉を耳にしたことのあるかたも多いだろう。生命や進化、あるいは社会現象などを数理的に扱おうという最近の傾向を称して、「複雑系」とか「複雑性の科学」と呼んでいる。もっとも、「複雑系」という言葉の使い方にも混乱があって、必ずしもみんながみんな同じ意味で使ってるわけではないようだけど。
 個人的には、適応・学習・進化といった現象を見せる系のことかな、という気がしている。その意味では車の流れは「複雑系」ではないのだと思うけど(というより、これを複雑系とよんでは、複雑系を研究してる人達に申しわけない)、人によっては交通現象は複雑系だって言うかもしれない。
 ちなみに、アメリカのサンタ・フェ研究所を中心とした「複雑系」研究の状況については、一般向けの読みものとして『コンプレクシティへの招待』(ロジャー・リューイン著・徳間書店)がある(必ずしもよいレポートとは言えないけど、面白いことは面白い)。また、日本の「複雑系」研究者がなにを目指しているかについては、例えば『現代思想』1994年5月号の『カオス―複雑系のエピステーメ』(津田一郎・金子邦彦・池上高志)が参考になる。
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 設備はともかく実験室は大抵ものすごくぼろくてきたない。特に国立大学はそういう意味での研究環境が劣悪な場合が多い。そんな中からすぐれた研究成果が出てくるんだから奇跡だ。しかし、いつまでも奇跡に頼っているわけにはいかないのじゃないだろうか。劣悪な環境といえば、ちなみに、僕たちの研究室は(理論グループだから実験室じゃないんだけど)、何度も雨漏りの被害にあっている(;_;)。
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 もちろん、ちゃんとした観測にはそれなりに装備や準備が必要なのは言うまでもない。さすがに交通工学のかたがたは本格的な観測をしていて、たとえば、小さい飛行船を飛ばして空から観測した映画を見せてもらったことがある。また、やっぱりできるだけ理想的な条件で観測したいという欲求はあるわけで、サーキットに20数台の車を走らせてデータを取った例もある。
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* ビデオはこちら
 MPEGに変換する時になにか指定を間違えたらしくて、やたらとレトロな雰囲気のビデオになってしまった。でも、なんだかいい感じなので、そのままにしておく。決して大正時代のビデオでも。『惑星ソラリス』でもない。
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『惑星ソラリス』
 スタニスワフ・レム原作(『ソラリスの陽のもとに』早川SF文庫)、アンドレイ・タルコフスキイ監督のソビエト映画で、SF映画の傑作。高速道路が縦横にはりめぐらされた未来都市のシーン(このシーンはモノクロ)が、実は日本の首都高で撮影されたのは有名な話。
 ちなみに原作もSF史上屈指の名作なので、機会があったらご一読を。これを凌ぐハードSFは存在しないといっても過言ではない。いや、ほんと。
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[注1]
 もちろん、この程度のビデオでどうこう言ってもしょうがないわけで、興味のあるかたは適当な場所を見つけて観測してみたらいいと思う。
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 交通事故が起きると、その車線だけじゃなく、なんの関係もない対向車線でも渋滞が発生することが知られている。対向車線の車が事故をよく見ようとしてスピードを落すからで、わき見渋滞なんて言われたりする。
 桜の季節には花見の名所付近でわき見渋滞が発生するという話を聞いたことがある。そうなのかもしれない。中央道で、右手に競馬場、左手にビール工場が見えるあたりも渋滞しそうだけど・・・?
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 密度というのは一定の区間にいる車の数で、例えば1キロメートルあたりの台数。流量のほうは、おおざっぱには観測点を一定時間に通りすぎていった車の数と思ってもらえばいい。
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 相転移というと、水が氷になったり水蒸気になったりする現象がよく引き会いに出される。こういう変化は温度や圧力を変えることによって引き起こされるもので、熱現象である。一方、今考えている交通の相転移は、熱とは関係ない。相転移といっても、ずいぶんと違うものなのだ。
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 もっとも、Interactive Science Column の第1回を読んだかたは、運動方程式を知っているからといって、必ずしも物体の運動を正確に追跡できるとは限らないことをおぼえているだろう。カオスと呼ばれる現象があって、ちょっとした計算誤差でも瞬く間に大きな違いに成長してしまうからだ。
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 例えば、以下のような方針でモデルを作る。
 皆さんは、車を運転するとき、どういうふうにスピードを調節してるだろうか。とりあえず近くにはほかの車がいないとしよう。それなら、好きなように走れる。高速道路なら100キロで走りたいかもしれないし、邪魔ものがいなければ(いけないと思いつつ)150キロくらい出したいかもしれない。もちろん、なるべくゆっくり走りたい人だっているだろう。好みのスピードは人それぞれで、それを個性と呼んでもいいかもしれない。
 さて、車のスピードが自分の好みより速すぎたり遅すぎたりしたら、アクセルを踏みこんだりゆるめたりして速度を変えてやる。これは調節。といっても人間のやることだから、100キロなら100キロにぴったり合わせることは無理な話で、どうしても少しはふらふらすると思う。これは揺らぎだ。
 まあだいたい、今挙げた個性・調節・揺らぎくらいを考えてやれば、1台の車の動きとしてはもっともらしいものができそうだ。
 じゃあ、前方にほかの車が見えたらどうするか。遠くにいるうちなら気にする必要はない。でも、距離がつまってきたら、なにか考えなくちゃならない。なんといっても、追突は避けなければ。そこで、前の車との車間距離や相対速度を考えながらアクセルを調節するわけだ。普通はなめらかに速度を変えてればいいとして、いざとなったら急ブレーキも踏めるようにしておいたほうがいい。

 車を動かす規則としてこの程度のことを考えておけば、車がたくさんいても車の動きをかなり再現できそうだ。もちろん、後ろの車に追いたてられるのがすごく嫌な人もいるかもしれないし、前の前の車のことまで考えて運転する人もいるかもしれない。片側2車線以上なら、追い越しもできるようにしなくてはならない。ほかにも色々考えつくと思うけど、必要ならモデルに取り入れればいいし、なくてもいいかなと思えば取り入れなければいい。シミュレーションしてみて、どうしても変ならまた考えればいいのだ。ここらへんが、運動方程式が初めから決まってる問題とは大きく違っている。

 こういうモデルの作りかたは、ボトムアップと言われることがある。決めてあるのは、運転者がなにをするかだけで、車の集団がどういう振る舞いをするかについては、モデルにあらかじめ仕込まれているわけではない。
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実は僕は自分で車を運転しないのだけど。
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車があんまり多くないとき
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 このシミュレーションでは1車線のサーキットを考えている。なので、右から出た車は左からもう一度入ってくる。グラフィック表示の都合で車を実際より大きく描いているため、車が重なってるように見えることがあるけど、実際には衝突していないので注意。
 また、車の色は車種ではなくて車(と運転者)の状態を表している。すごく大ざっぱにいうと、青は気分よく走っているところ。赤になったら、衝突を避けるためにやむをえず止まってしまった状態だ。それ以外の色は、運転者のいらいらの度合を表してると思ってもらえばいい。

 なお、シミュレーションのプログラムは、湯川諭さん(大阪大学理学研究科)によるもの。
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[1/fゆらぎ]
 Interactive Science Columnでも以前とりあげられてたようだし、巷では扇風機や音楽にまでつかわれているので、1/fゆらぎについては既に耳にしたことのあるかたが多いことと思う。
 1970年代に武者利光先生のグループが、高速道路上での車の流れに1/fゆらぎを見い出した。車が次々にやってくる様子を時系列として記録し、その揺らぎを周波数分解すると、強度が周波数に逆比例するというのである。その後の研究で、これは1/fゆらぎの仲間である1/fα型のゆらぎであることがわかってきた(この型まで含めて1/fゆらぎとよぶこともある)。シミュレーションなどによれば、αは1.3とか1.5とか1.8とか、どうやらそのくらいの値になるようだ。ちなみに、細いパイプを流れる粉体でもαが1.5程度のゆらぎが観測されている。
 交通流で、こういうゆらぎが観測されるのは、車がいろいろな大きさの集団を形成して、いろいろなタイミングでやってくるかららしい。
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車の数がちょっと多いとき
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