山口真/共振器ポラリトン凝縮と半導体レーザーの接続理論

日時
2012年5月1日(火) 13:00
場所
大阪大学サイバーメディアセンター・豊中教育研究棟7階 会議室
会場地図
豊中キャンパスの地図12番の建物です.
題目
共振器ポラリトン凝縮と半導体レーザーの接続理論
講演者
山口 真氏(阪大理)
要旨

2 次元微小共振器中に量子井戸を埋め込んだ構造は,半導体レーザーとして広く応用されているが,近年では,共振器ポラリトン凝縮の物理を調べる舞台 としても注目を集めている[1-3].半導体レーザーと共振器ポラリトン凝縮は,それぞれ本質的に非平衡の現象,および,熱平衡の現象として大別 される.このため,半導体レーザーに対してはMaxwell Semiconductor Bloch 方程式 (MSBE;非平衡理論),共振器ポラリトン凝縮に対しては,BCS理論のGap方程式 (熱平衡理論),というように,両者の物理は別々の理論を用いて理解されてきた.しかしながら,多体効果を含めてこれらの現象を同時に取り扱える理 論は存在しなかったため,両者の物理の統一的な理解は,依然として不十分であった.

そこで我々は,平均場近似と非平衡Green関数[3]を用いることで,定常状態において,これらを同時に取り扱える理論の構築を試みた.その 結果,系の非平衡性が重要となる状況下ではMSBEに,熱平衡が達成される状況下ではBCS理論のGap方程式に帰着する連立方程式が得られた. これにより,ポラ リトン凝縮および半導体レーザーを分け隔てなく取り扱うことが可能になった.

このように,両者の物理を統一的に記述できる理論的枠組みが整ったので,半導体レーザーと共振器ポラリトン凝縮の接続を,我々はさらに詳しく研 究した.その結果,Gap方程式により記述されるポラリトン凝縮から,励起を次第に上昇させていくと,MSBEに従う波数領域が徐々に増加してい くことが明らかになった.また,最終的には,半導体レーザーの特徴とされるキャリア分布のhole burning が得られたが,この状況下でも依然として,Gap方程式に従う波数領域が存在することが分かった.これは,非平衡の影響を強く受ける波数領域 (MSBEに従う波数領域) と熱平衡とみなせる波数領域 (Gap方程式に従う波数領域) が,Coulomb相互作用により相関をもちつつ,レーザー動作に至ったことを意味する.このようなレーザー動作は,従来の電子・正孔プラズマ利得に基づ く原理とは異なる.詳細は当日報告する.

この研究はFIRSTプログラムと,科研費新学術領域研究DYCE (20104008) の援助を受けている.

*References
  1. [1] J. Kaspzak et al., Nature 443, 449 (2006).
  2. [2] K. Kamide, and T. Ogawa, Phys. Rev. Lett. 105, 056401 (2010); Phys. Rev. B 83, 165319 (2011); Phys. Status Solidi C 8, 1250 (2011).
  3. [3] M. H. Szymanska, et al., Phys. Rev. Lett. 96, 230602 (2006); Phys. Rev. B 75, 195331 (2007).

坂田綾香/Dictionary Learningの統計力学

日時
2012年5月10日(木) 15:00
場所
大阪大学サイバーメディアセンター・豊中教育研究棟6階 605実験研究共用室
会場地図
豊中キャンパスの地図12番の建物です.
題目
Dictionary Learningの統計力学
講演者
坂田綾香氏(東工大)
要旨

ゼロ成分が有限確率で存在する性質(スパース性)を 持つデータについて、線形圧縮された表現から元のデ ータを推定する問題は圧縮センシングと呼ばれている。 圧縮センシングは、大規模な観測が困難な系における データ処理や、効率的なデータ通信に応用できるもの として注目を集めている。本研究では、スパース性を 利用する圧縮センシングの枠組みをスパース性を持た ない一般のデータに適用するために、データがスパー スに表現される基底(Dictionary)を推定するDictionary Learningという問題を考える。

Dictionary Learningにおいて考えるべき問題のうち、 本研究ではDictionaryの一意性について取り上げる。 与えられたP個のデータサンプルからそれらデータが スパースに表現されるためのDictionaryを学習する、 という問題設定をたて統計力学的な解析を行った結果、 Dictionaryを特定するために必要なPはO(N)であること が分かった。これは既存の見積もりからの大きな改善 となっている。

本発表では、解析の詳細と、Dictionary Learning のP依存性についての物理的描像を説明します。

*References
  1. A. Sakata and Y. Kabashima, arXiv:1203.6178.