「いちから聞きたい放射線のほんとう - いま知っておきたい22の話」の目次です。こんな話を書きました。
第一部の前の「自然と科学とわたしたち」から第二部の10までが対話になっています。
おかざきさんの絵は随所に
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プロローグ おかざき真里
この本を手にとってくれたかたへ 小峰公子
自然と科学とわたしたち
第一部 放射線ってなんだろう
1 みんなつぶつぶでできている - 原子と原子核のこと
2 放射線はやるせなさエネルギー - α線のこと
3 電子ビューン - β線のこと
4 光って、つぶつぶ - γ線のこと
5 ダイスをころがせ - 半減期のこと
6 からだのなかの放射性物質 - 生物学的半減期のこと
7 単位と大きさのこと
8 ベクレルってなに?
9 ふたつのシーベルト - 等価線量と実効線量
10 何を測ってるの? - 空間線量率
11 食べたらどれくらい内部被ばくする? - 預託実効線量
12 ここまでのまとめ
第二部 放射線とわたしたち
1 気になっていたことをこの際、聞いてしまおう
2 放射線ってどういう影響があるの
3 遺伝子と放射線のこと
4 放射線とがんのこと
5 母親も、将来母親になるひとも
6 子どもの甲状腺がんのこと
7 核実験の時代 - むかし降った放射性物質のこと
8 まわりにある放射線 - 自然放射線のこと
9 除染してわかったこと
10 放射線とわたしたち
私が考えるリスク 小峰公子
あとがき 菊池誠
表紙の画像も貼っておきますね。おかざきさんの絵が希望を感じさせて、すてきだと思います。
STAP細胞の話は論文に不正があったんじゃないかと取り沙汰されているようなのだけど(そして、たしかにお粗末なところがあるようなのだけど)、その話はしない。写真が使い回しだったかどうかとかは調査委員会の報告があるのだろうし、STAPそのものの真贋はいずれ追試で明らかになるはず。ここでは、初期の報道について考えたことを書いておきたい。
STAPがニュースになったとき、一部の人たちから「ニュースでは女子だとか割烹着だとかデートの話だとかばかりで、肝心の研究をきちんと伝えていない」という批判があった。実際、マスメディアは、割烹着で実験する小保方博士の映像や「デートの時も実験のことを考えていた」的なエピソードを繰り返し伝えた。「これだから、日本の科学報道は」というのが批判なのだが、ちょっと待ってほしい。なぜ、テレビは割烹着で実験する小保方博士の様子を放映できたのだろうか。なぜ、デートのことなんか知ってるのだろうか。理由ははっきりしている。本人が映像を撮らせ、そして語ったからだ。僕の理解では理研は大学などと違って広報体制がしっかりしているはずだから、これだって小保方さんのスタンドプレーでできることではなかったと思う。理研の広報がコントロールして、あれだったのではないのだろうか。
疑問はこうだ。理研の広報には小保方さんを「売り出そう」という下心があって、割烹着での実験場面(再現映像みたいなものだから、まさにやらせだ)を撮らせ、エピソードを語らせたのではないのだろうか。もしそうなら、報道が割烹着やデートに集中したのは、まさに理研側の「売り出しかた」が当たったということになる。おそらく、期待した以上に当たりすぎたのだろう。でも、もしもそういう下心があったのだとしたら、報道のされかたに何か文句を言う筋合いはないのではないか。そうやって売り出したら、ああいう報道になるのは、想定の範囲内だ。
僕は本当のことは知らない。ただ、理研ならこういうものは広報がきちんとコントロールしているはずだと思っているだけだ。これについても、いずれ本当のことがわかることを期待したい。もし、僕の想像の通りだとしたら、こういう広報のやりかたは「研究成果の広報」にはふさわしくない。それだけは実証されたと思う
いわゆる「リケジョ」的な売り方でアイドルを作ろうというやりかたには、もちろんそれ相応のリスクがあるということだ
[追記2/28]
こんなの憶測記事じゃん、と思われるかもしれませんが、まったくもって憶測記事です。特にそれがいけないとは思いません。だって、理研からは何も出てこないのだから。僕の疑問は「なぜテレビは割烹着動画を放映できたのか」で、その答は「撮らせたから」以外にないわけです。そもそも割烹着で実験していることをマスコミが知っているという時点で、「それを誰かが話したから知っている」のは自明でしょう。それが広報のコントロールの元に行われたのか、もっと狭い範囲で行われたのか、本当のことは知りません。しかし、テレビには同僚も映っていたように記憶するので、小保方さん独断のスタンドプレーとはいささか違っていて、周りも認めていたのでしょう。まあ、そういうことです。「割烹着とデート」に広報がどの程度関与したのかは、できれば明らかにしてほしいと思います
前の記事に書いた放射線の本、版元の筑摩書房のウェブサイト( http://www.chikumashobo.co.jp )に近刊予告が出たので、詳しい情報を書きます
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タイトル: 「いちから聞きたい放射線のほんとう ─いま知っておきたい22の話」
著者: 菊池誠、小峰公子、おかざき真里
四六変判 200頁 刊行 03/13(もう少し遅くなるのかも) ISBN 9784480860798
定価1,470 円(税込)
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zabadakの小峰公子さんと僕の対話にマンガ家のおかざき真里さんのイメージ・イラストで構成しました(図解イラストは別のイラストレーターにお願いしました)。すごくやさしい話をしています。それこそ、「ものはみんな原子というつぶつぶでできている」というところから始めて、現存被ばく状況の考えかたまで、みたいな感じです。メンバーを見て、ちょっと驚いてくれるといいなあ。
本文はほぼ全編が対話です。対話形式にはいい面とよくない面があるのですが、今回は「なるべく普通の疑問に答える」ために敢えて対話を選びました。もともとは、スカイプのチャットです。もちろん、それを徹底的に編集しましたが、話題の流れかたなど、チャットの即興性みたいなものをできるだけ活かすようにしたつもりです。
おかざきさんにはプロローグにあたるマンガと何点かのイメージ・イラストを描いてもらいました。これは科学の本としては画期的じゃないかな。ほとんどは日常の場面を描いていただいたのですが、三つだけは図解イラストの代わりになるもの(つまり、単なる図解ではないもの)をお願いしました。原子の絵と原子核の絵とDNAの絵です。科学書にはあり得ないようなすてきな絵だと思います。
内容は「今知っておきたい知識」に限りました。だから、放射線の本なのに、核分裂の話も中性子線の話も書いてありません。それから、正確性よりも簡単な記述を優先しました。たとえば、1ベクレルのセシウム137からは毎秒1個のβ線と1個のγ線が出ると書きました。もちろん、このブログにも以前書いたように、γ線は1個より少なくて、0.85個くらいです。要するに、それくらいの詳しさの本だということです。対象としては学校で習った理科もちょっと怪しくなってるくらいの人。詳しい人には食い足りないと思います。もともとは小峰さんがその立場だったんですけど、書いてるうちに小峰さんも放射線に詳しくなっちゃったんだよね。田崎さんの本でも難しいと思う人に、「田崎本の前に読む本」として読んでもらえればというつもりで作りました。
あと、女性に読んでもらいたいと思って、デザインも「カフェでハンドバッグから出しても恥ずかしくない本」を目指しました。それが成功してるかどうかは、出たら確認してください。成功しているといいなあ。なんたって、「おかざき真里が表紙を描いてる本」ですから、それだけでもいけてると思うんだけど。この本のコンセプトは、ある意味、科学コミュニケーションの挑戦的実践になっていると思うので、「科学コミュニケーション」の専門家にも意見を伺いたいところです。
この本を作ろうと思ったのは、書店の棚に一般向けでわかりやすくて「怪しくない放射線本」が少なかったからです。田崎さんの本とか安斎さんの本とか、いい本はあるのですが、割合でいうと少ない。もちろん、教科書レベルならたくさんあるのですけど。でも、科学的に妥当なことを短くやさしくわかりやすく書くというのは、ひどく難しい。難しいから、あんまり数がないんだと思うのだけど、それでもまったくないわけではないし、今も制作中のものがあると聞いています。そういう「冷静でわかりやすいやつ」をたくさんの人が書いて、書店の棚にたくさん並べばいいと思います。科学的に妥当な内容でも、スタンスの違いはあるから、読み比べると面白いんじゃないかな
本を作ろうと考える前に、少人数の勉強会を何度もやりました。その経験も活かしました。ただ、この本は勉強会よりもずっとやさしい内容です。やさしく話すのもやさしく書くのも難しくて、それこそ「エネルギー」をどう説明するか、ずいぶん考えましたが、結局はごまかしてしまったという感じです。でも、エネルギーをやさしく説明するのは難しいですよね。これは今後の課題です。いずれにしても、勉強会に参加してくださったみなさんや、原稿段階で読んでいただいたたくさんのみなさんのおかげでこの本ができました。ありがとうございました
発売まではまだ間がありますが、最終校正も終わっちゃったので、あとは待つだけです。いくつかのネット書店ではもう予約できますが、リアル書店に注文していただくのがいいかなあとも思います。内容のこととか、装丁とか、これから少しずつ書いていきます
今、友人たちとすごく易しい(と思う)放射線の本を作っています。
易しくてまとまった本としては、田崎さんの本があるのですが、あれでもまだとっつきにくいというかたのために、田崎本を読む前に読む本という程度の位置づけで作っています。
ICRPの見解に即して書いているので、誰もが納得できる本とは言えないかもしれませんが、少なくとも「標準的にはこう考える」ということを易しく書いたつもりです。
震災と東京電力福島第一原発事故からちょうど3年になる3月中旬に出せると思います。
今さらと思うかたもおられるでしょうが、「今だから」というつもりで作ってます。
誰が共著者かとか、どんな表紙なのかとか、どんなものなのかとか、たぶん来週くらいに公開できるのではないかな。
ちょっとびっくりするような本になる予定です。
書店に行くと、田崎本のような「冷静でまともな本」よりも、いたずらに危険を煽るばかりの怪しい本のほうが圧倒的に多いのですが、3年経って、実被曝量は心配したほど多くない(追加被ばくが年間1mSvを超える人は稀です)ので、リスクも小さいということがはっきりしてきました。今こそ少し冷静に情報を吟味したいけど、易しい本がいいというかたに読んでいただければと思います。
科学コミュニケーションの実践としてもユニークだと思っています
続報はもうすぐ